
今回は、こんな声に応えていきます。
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当記事で分かること
- せん妄とは
- 分類について
- せん妄の評価について
<Contents>
せん妄とは
せん妄(譫妄:delirium)は急性脳障害で、不穏(agitation)とは区別されます。脳障害、つまり臓器の障害なので回復すると記憶に無いことも多く、そう言った患者は「え?私暴れてたの!?」などと驚きます。
不穏と何が違う?
不穏は一般的には様々な原因で暴れてしまう様な状態を指しますが、その原因として「せん妄」が大きく関わっています。
両者は混在することも多いですが、混在しないことも有り得ます。分かり易く言うと、デモなどで暴れている人は「不穏」ですが、意識はしっかりしているので「せん妄」には該当しないイメージです。
危険因子
注意ポイント
年齢・疾患などの根底部分は変えられないので、環境・薬剤・疼痛・睡眠・検査値などの改善できるポイントをケアしていきます。
- 年齢:高齢者
- 疾患:認知症・重症患者・感染症など
- 環境:ICU・ベッド移動・騒音・電灯など
- 精神:不安・睡眠など
- 薬剤:鎮静薬(BZD)など
- 代謝:電解質・低酸素症など
せん妄の分類について
せん妄は「暴れる」イメージを持つ人が多いですが、「低活動型」と呼ばれる無関心・無動などを特徴とする見過ごされ易いタイプも存在するので注意が必要です。
ポイント
- 過活動型:興奮・暴力・攻撃的などの徴候を示す状態のこと
- 低活動型:無気力・無関心・集中力低下などの徴候を示す状態のこと
- 混合型:両者が混在している
評価方法
特に低活動型せん妄は医療者にとって「落ち着いている」と誤解されて見過ごされます。せん妄は臓器障害が原因に挙げられるので、見過ごすと予後が悪くなるとされます。これらを正しく評価するツールとして、「ICDSC」・「CAM-ICU」などが用いられています。
ポイント
研究では、「CAM-ICU」の方がせん妄患者の拾い上げや判定を正確に行えますが、リアルタイムで評価する負担や時間的制限などの欠点も備えます。一方で「ICDSC」は過去の状況で判断可能なので、慣れるとパパっと評価できます。個人的には、どちらも採用して上手く使っていけば良いと思います。
ICDSC
「Intensive Care Delirium Screening Checklist」は8項目の評価をして、8点満点中4点以上でせん妄と判断する評価スケールです。前述した通り、慣れると短時間で評価可能なので滅茶苦茶忙しいときに重宝しますが、CAM-ICUと比較して判定を間違えている可能性が高いことを念頭に置きましょう。ざっくり簡単に解説します。
評価項目
- 意識:反応に乏しい場合は評価終了です。傾眠・興奮状態では1点、覚醒(意識清明)では0点になります。
- 注意力:正常な会話や指示を理解できない場合は1点です。
- 見当識:JCS・GCSでも評価する時間・場所・人物などの認識です。不適切で1点になります。
- 精神障害(幻覚・妄想など):そこに存在しない物を見たり、触ろうとする場合は1点になります。
- 過活動・低活動:鎮静薬追加・必要時抑制・意欲低下などは1点になります。
- 会話・情緒不安定:支離滅裂な会話や不適切な感情は1点になります。
- 睡眠・覚醒サイクル:4時間以下又は1日中眠っている場合は1点になります。
- 変動:1~7が24時間以内で変化していると1点になります。
CAM-ICU
「Confusion Assessment Method for the ICU」は名前の通り、せん妄評価ツールとして集中治療室で用いられています。比較的落ち着いている勤務では、患者に負担にならない程度で使うと良いと思います。
評価項目
RASS
RASS(後述)で鎮静の程度を評価します。「-3」~「+4」で評価を行いますが、正直「+3」・「+4」は攻撃的な状態なので難しいかと思います。
注意力欠如
24時間以内に精神・行動に異常が見られる場合、特定の数字で手を握るなどの指示をして正解・不正解を数えます。10回中8回以上の正解でせん妄が否定されます。
RASS
注意力欠如で引っ掛かった場合はRASSを見ます。RASS≠0の場合はせん妄と判断します。
無秩序な思考
RASS=0(意識清明)の場合は無秩序な思考を判断します。無秩序な思考とは、言い換えれば非常識的な思考とも言えます。2問以上誤答した場合は、せん妄と判断します。
- 石は水に浮くか?
- 魚は海にいるか?
- 1gは2gより重いか?
- 釘を打つのにハンマーを使用するか?
*誤答が1つ以下の場合は「チョキ」を見せて真似をして貰います。その後に評価者の「チョキ」を降ろして、口頭で患者のもう片方の手で「チョキ」を指示します。ここまで出来て「せん妄無し」になります。
RASS
Richmond Agitation-Sedation Scale(日本呼吸)と呼ばれる鎮静スケールで、現在主流になっている鎮静尺度です。鎮静尺度とは言ってもCAM-ICUの基準になっているので、私の病院では鎮静剤が無くとも使って評価していました。「+」に傾くと興奮状態に、「ー」に傾くと鎮静状態に移行します。「+4」~「-5」で評価して、「0」が意識清明です。
評価
- +4:好戦的で平たく言えば超危険な状態です。
- +3:非常に興奮していて管などを抜こうとします。
- +2:人工呼吸器と噛み合わず、突発的な体動などを起こします。
- +1:ソワソワと落ち着きの無い状態です。
- 0:意識清明で落ち着いています。
- -1:呼び掛けに10秒以上開眼してアイコンタクトが可能です。
- -2:呼び掛けに10秒未満のアイコンタクトで応えます。
- -3:呼び掛けにアイコンタクトは無く、運動・開眼で応えます。
- -4:呼び掛けには無反応で身体刺激で反応します。
- -5:全く反応しない状態です。
注意ポイント
一般的に「0」~「-2」が適切な範囲だと言われていますが、疾患・病状などでも変わってきます。評価時には30秒間の視診で「+」を見極めた後に、呼び掛けや身体刺激を行って「-」を評価します。
今回は「せん妄」について解説しました。
まとめ
- せん妄は臓器障害です
- せん妄が続くと予後が悪くなる可能性があります
- せん妄は不適切な抑制や鎮痛、環境なども原因に挙げられます
参考・引用文献(Web)
- 日本呼吸療法医学会ガイドライン(http://square.umin.ac.jp/jrcm/contents/guide/page03.html)
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