
今回は、こんな声に応えていきます。

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当記事で分かること
- 輸血製剤について
- 輸血療法について
- 各製剤の特徴とは
<Contents>
輸血療法と製剤の種類について
輸血製剤は全血製剤と成分製剤に分かれます。現在は成分輸血が主流なので、成分輸血を解説していきます。
- 全血製剤:そのまま採取した血液に保存液を添加しています。
- 成分輸血:必要な成分を抽出して保存しています。
また、輸血製剤の採血方法によって次の通り分かれます。
- 同種血輸血:献血者の血液を用いる方法で、稀に感染症や免疫反応などの副作用を起こします。
- 自己血輸血:待機的手術などで用いられ、自分の血液なので副作用を起こさないです。
種類
成分輸血の代表的な種類は以下の通りです。基本的に輸血は感染症・副作用などの観点より必要最低限で行います。
- 赤血球製剤(RBC)
- 血小板製剤(PC)
- 血漿製剤(FFP)
その他、血漿分画製剤としてアルブミン製剤やグロブリン製剤なども存在します。

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赤血球製剤(RBC)の特徴・適応など
以前は、MAP(Mannitol Adenine Phosphate:保存液)・RCC(Red Cell Concentrate:濃厚赤血球)などと呼称していましたが、現在の販売名はRBC(Red Blood Cells)です。一般的に1単位140mlで1万円程度の薬価になります。製剤に記載されている略語の意味は以下の通りです。
- LR(Leukocytes Reduced:白血球除去):輸血副反応の原因となる白血球除去が実施されています。
- Ir(Irradiated:照射):輸血による移植片対宿主病(GVHD:Graft Versus Host Disease)を予防する目的で15~50Gyの放射線が照射されています。
適応・保存
7g/dL程度を目安に貧血で使用することが多いですが、手術などで多量の出血が懸念されたり、肺障害などで重度の酸素化障害を来す場合などは高めに保ちます。保存方法は4∓2度ですが、60分以内に使用すれば室温保存で良いです。
- 貧血
- 手術
- 低酸素症
*体重50Kgの患者に2単位の投与でHb:1.5g/dL程度上昇します。
*大量輸血時は凝固因子が減少するのでFFPと併用していきます
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注意ポイント
- カリウム値:赤血球内にカリウムを含みます。溶血・保存方法などで代謝により赤血球外にカリウムが移動したり、Ir(照射)によっても含有量が上がるので推移に注意を要します。
- 色調:献血者の状態で色調は違いますが、黒色化が酷い場合は細菌汚染の可能性を考えます。
- カルシウム値:保存液にクエン酸ナトリウム(抗凝固)を含むので、投与によってカルシウムイオン(凝固因子:Ⅳ)が下降します。それにより出血傾向を来すので必要に応じて補充します。
血小板製剤(PC)の特徴・適応など
PC(Platelet Concentrate:濃厚血小板製剤)は血小板(Plt)の値が5万/μL程度を目安に検討します。一般的に投与量辺りの値段は一番高く、1単位20mlで8,000円程度の薬価になります。
適応・保存
保存方法は22∓2度で振盪します。
- 血小板減少
*血栓性血小板減少性紫斑病(Thrombotic Thrombocytopenic Purpura:TTP)では、血小板の補充で血栓が助長されるので禁忌となります。
*体重50Kgの患者に10単位の投与でPlt:3.8万/μL程度上昇します。
振盪
- ガス交換促進
- 乳酸の拡散
- 感染予防
振盪する理由は「凝固防止」じゃ無いので、勘違いに気を付けましょう!
30分以上静置したままだと細胞がガス交換を行えず、更に血小板周囲に乳酸が溜まります。それに伴ってpHが下降して血小板の機能が下がってしまいます。よって、振盪によってガス交換と乳酸の拡散を促します。また、pHの下降によって鉄が遊離して菌を増殖させるので、感染予防の効果にもなります。

スワーリング
血小板を投与する前に確認する事項で、光に通して見ると渦が生じています。室温・静置・汚染などによって保存状態が悪いとスワーリングが消失します。
血漿製剤(FFP)の特徴・適応など
FFP(Fresh Frozen Plasma:新鮮凍結血漿)は凝固因子などの補充を目的に用います。一般的に1単位120mlで1万円程度の薬価になります。凍結により白血球は機能を失活するので、Ir(Irradiated:照射)は行われないです。-20度以下で保存します。
適応・保存
- 凝固因子補充
*体重50Kgの患者に2単位の投与で24%程度活性します。
注意ポイント
- 破損:凍結されているので、他の製剤よりも破損し易く気付き難いので注意します。
- 使用:融解後は早めに使用し、時間を要す場合は4∓2度で24時間保存可能です。再凍結は禁忌です。
- 外観:献血者の食習慣によって白濁しますが、そのまま使用可能です。
融解
基本的に製剤の入っているビニール袋に入れたまま、恒温槽やFFP融解装置を用いて30~37℃の温湯で融解します。
- 低温:沈殿(クリオプリシピテート)が析出して、フィルターの目詰まりを起こす可能性が高くなります。
- 高温:蛋白質の熱変性によって機能が低下・失活して本来の効果が得られなくなります。
輸血療法の注意事項について
輸血セット
ルート
- 基本的には末梢投与が推奨されていますが、確保が難しい場合などは中心静脈カテーテルからの投与も可能です。
- 目詰まりを起こすので、輸血用のフィルター以外に通さない様にします。
- 生理食塩水以外との混合は避け、投与前後でラインのフラッシュを行います。特にブドウ糖による凝集やカルシウムイオン(凝固因子:Ⅳ)による凝固(フィブリン析出)を起こします。
- G:18~22Gを選択します。大量輸血の場合は太い方が好ましいです。細ければ細いほど、流速や加圧によって溶血が懸念されます。
観察
- 輸血開始後5分間は急性反応に注意してベッドサイドで患者を観察します。
- 輸血開始後15分程度経過した時点で、再度患者を観察します。
- 輸血副作用症状を疑う場合は直ちに輸血を中止して、医師に連絡します。
- 成人の場合、輸血開始から最初の10~15分間は1分間に1mL程度で輸血し、その後は1分間に5mL程度で輸血します。
副作用
不適合輸血(Ⅱ型アレルギー)やGVHD(移植片対宿主病)などによって抗原・抗体に反応してしまうと、凝集や溶血などを起こしたり、感染症などを呈します。各製剤は白血球などを取り除いていますが、100%除去されている訳では無いので適合していても注意します。
以下の症状などが出現します。
- 皮膚症状(蕁麻疹)
- 熱感・発熱
- 頻脈・ショック
- 呼吸障害
- 凝固異常
- 腎不全
緊急輸血
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ABO・Rh式血液型とは?検査・抗原・原理などを解説します<看護・医療国家試験>
原則として血液型検査・交差適合試験・不規則抗体検査などを行いますが、緊急輸血などでは検査を省いて輸血する場合もあります。
- 血球製剤(RBC):抗体に反応しない様に、抗原の少ないO型(Rh⁻>Rh⁺)が第一選択になります。
- 血漿・血小板製剤(FFP・PC):抗原に反応しない様に、抗体の少ないAB型(Rh⁻>Rh⁺)が第一選択になります。
エホバの証人
輸血には同意書が必須ですが、一部キリスト教の一派となる「エホバの証人」には輸血によって訴訟問題となるので注意しましょう。人によって血漿分画製剤は可能です。

今回は「輸血」について解説しました。
まとめ
- 輸血は必要最低限で適応に合わせて使います
- 同意書・患者確認・宗教・保存・確認・投与方法などに注意します
- ルート、特に原則生理食塩水以外との混合は避けます
- 投与後は副作用の出現に注意して観察します
- 緊急輸血では赤血球はO型、血漿・血小板はAB型が優先されます
参考Web
- 日本赤十字社
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