
今回は、こんな声に応えていきます。内外シャント・腹膜透析・血液透析など、習い立ての学生の時はイメージが湧かないですよね!画像も含めて解説していきます。
この記事は看護学生・看護師は勿論、その他の医療学生・関係者にも通ずる基礎内容です。専門書やガイドラインなどでデータや事実を確認してから執筆しています。学科試験・国家試験・予習復習などに役立ててください! 国家試験範囲の解説一覧は領域別にHOMEに掲載しています。Kindle電子書籍を活用して無料・低価格で「電子ノート」を作りたい場合は、以下の記事を参考にしてくださいね!
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【医療学生】iPad・アプリなどを活かした図解ノートによる勉強方法について<看護>
当記事で分かること
- シャントの種類について
- 関連用語について
<Contents>
シャントの種類・手術について
シャントは「短絡」と言う意味で、何かが繋がっている様子を表します。透析以外でも様々なところで使われる言葉です。
血液透析で使用されるシャントは以下の通りに大別されます。
- 内シャント
- 外シャント
総じてバスキュラーアクセス(Vascular Access)・ブラッドアクセス(Blood Access)とも言います。Vascularとは血管と言う意味です。
それぞれ見ていきましょう!
内シャント
内シャントは名前の通り、体内のシャントを言います。動静脈を繋ぎ合わせたり、人工血管を用いたする方法などです。非シャントとして、動脈を皮膚近くに引っ張り上げる方法(動脈表在化)も存在します。以下の画像の通り、一般的なイメージのシャントです。

個人差は勿論ですが、血液透析は週3回通院して1回4時間程度要します。
1分間に必要な血流量は200ml前後と、静脈の血流では補えず、かと言って毎回動脈を穿刺するのも出血・瘤などの合併症の危険性が高く適さないので、静脈の刺し易さと動脈の血流量を兼ね備えたシャントを造設します。
ポイント
- 日常生活で不便になるので利き手とは反対側の静脈と動脈を選びます
- 第一選択は橈骨動脈と撓側皮静脈です
- 吻合後は動脈血が静脈に注ぎ、静脈の血管が太くなります
- シャント肢や造設前は点滴・採血・血圧測定などは原則禁止です*吻合の方法は様々です
合併症
- 狭窄・閉塞
>シャント音が笛の様に高音になったり、脱血不良となります。必要に応じてマッサージや血管内治療を行います。
- シャント瘤
>動脈瘤の様に膨れています。外科的治療を行います。
- 盗血(スティール)現象
>動脈の血流が静脈に流れるので、末梢循環不全などを呈します。
- 感染症
>穿刺部から雑菌が入り、敗血症などを呈します。
- ソアサム症候群
>静脈の中枢が狭窄し、血が心臓に戻り難くなることで前腕が腫脹します。
注意ポイント(日常)
- シャント肢で重い荷物を持ったり、腕時計、腕枕などをするのは血流の低下を招くので避けます。
- 穿刺した当日は安静にして清潔にし、出血・感染などに注意します。
- シャント音(ザーザー)、スリル(血流触知)を観察します。
外シャント
外シャントは、血管にカテーテルを留置して体外に出した状態にします。感染やカテーテルの閉塞などを起こし易いです。
どの内シャントも適応にならない場合や、急性期で一時的に透析が必要になる場合などによく使われます。主に内頸静脈や大腿静脈を用います。
血液透析・腹膜透析の原理や合併症などについて
血液透析だけで何種類にも細分化されます。ここでは一般的な血液透析と腹膜透析について解説していきます。透析患者の9割以上が血液透析を占めます。

透析の導入は糖尿病による腎症が多く、目的は以下の通りです。
- 除水
- 老廃物除去
- 電解質補正
注意ポイント
全体の死因は感染症・心不全の順で多いので、特に注意しましょう。
出典:日本透析医学会
血液透析(HD:Hemodialysis)
人工透析は、腎臓の機能を人工的に代替してくれる治療です。英語で「Dialysis」とも言い、筒状の透析膜をダイアライザーと言います。
透析の仕組みは以下の通りです。
- 拡散:透析液と血液を接触させることで、透析液の濃度が高い物質(HCO3⁻など)は血液に拡散して補充され、透析液の濃度が低い物質(尿素・カリウム・リンなど)は透析液に拡散して取り除かれます。
- 限外濾過:浸透圧や機械の圧力で、水分を取り除きます。
*脱血とは血を汲み取ること、返血とは血を戻すことです
注意ポイント
・不均衡症候群
>導入期や血液の脱血量が多い時などに起こり易く、透析によって老廃物が一気に排泄されることで、血中の浸透圧が変化します。それにより、脳細胞などに水分が移行して頭痛・悪心・嘔吐・神経症状などを呈します。足が吊ってしまう「こむら返り」も頻繁に見られます。
・出血
>異物に触れると、血液が固まってしまうので抗凝固薬を使用します。場合によっては、尿毒症による血小板機能障害も呈すので出血傾向に注意しましょう。
・ショック
>除水によって血流が減り、低血圧・狭心症・心停止などを起こします。
・体重測定
>透析患者にとって必須の情報です。透析後の目標体重をDW(Dry Weight)と言います。
CRRT
持続的腎機能代替療法(Continuous Renal Replacement Therapy)とは、緩徐に長時間の透析を行うことで低血圧などを防ぎます。重症患者などで利用され、24時間継続することも多いです。詳細は割愛しますが、以下の通り様々な種類が存在します。
- 持続血液濾過(CHF:Continuous HemoFiltration)
- 持続血液透析(CHD:Continuous HemoDialysis)
- 持続血液濾過透析(CHDF:Continuous HemoDiaFiltration)

腹膜透析(PD:Peritoneal dialysis)
次は腹膜透析に関してです。
血液透析の透析膜に代わって腹膜を利用します。血液透析と比較すると、患者数は圧倒的に少ないです。
透析の効率は悪いので、コツコツと毎日腹腔に注入し、注入後は6時間程度放置してから排液をします。一連の手技で30分/回程度要し、日に4回前後行うデメリットは生じますが、通院などの拘束や食事制限が少ないです。但し、腹膜は年々劣化したり合併症などの関係により5年前後で血液透析になります。
CAPD・APD
持続携行式腹膜透析(CAPD:Continuous Ambulatory Peritoneal Dialysis)と自動腹膜透析(APD:Automated Peritoneal Dialysis)に分かれます。
- CAPD:1日4回程度の注入・排液を行います。注入後は6時間前後溜めたまま活動可能で、時間になったら排液します。
- APD:就寝中に自動的に行います。
注意ポイント
- 腹膜炎:手技・管理などにより細菌が繁殖してしまいます。血液透析への移行の原因になります。
比較
HD | PD | |
通院 | 週3回程度 | 月2回程度 |
効率 | 高 | 低 |
身体負担 | 大 | 小 |
今回は「シャント」・「透析」について解説しました。
まとめ
- シャントは大別して2種類です
- シャント肢は長く使う為にも大切に扱います
- シャント音・スリルを観察しよう!
- 透析は拡散と限外濾過を原理にしています
- 血液透析では不均衡症候群・ショックなどに注意します
- 腹膜透析は基本的に自己管理ですが、感染に気を付けます
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