
今回は、こんな声に応えていきます。
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当記事で分かること
- 胃・十二指腸潰瘍について
- 疼痛の時間帯って?
- 原因菌について
<Contents>
胃・十二指腸潰瘍(消化性潰瘍)
好発部位
胃・十二指腸潰瘍は消化性潰瘍とも言われ、潰瘍よりも浅い粘膜障害は糜爛と言います。多くは攻撃因子と防御因子の不均衡で生じます。
- 胃角部:中高年層に多く、食後に胃の運動が活発になったり、空腹時の胃酸が影響するなどで痛みます。
- 十二指腸球部:若中年層に多く、比較的強酸が流れ込む空腹時に痛みます。
*食物が入ると胃酸のpHは上がり、酸が弱まります。
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胃腺
噴門腺 | 胃底腺 | 幽門腺 |
粘液細胞 | 主細胞・副細胞・壁細胞 | 粘液細胞 |
粘液 | 下表参照 | 粘液・ガストリン分泌 |
胃底腺
主細胞 | 副細胞 | 壁細胞 |
ペプシノゲン | 粘液 | 塩酸・内因子 |
赤字が攻撃因子で、青字が防御因子です。攻撃因子が増えると潰瘍の危険性が高まります。上の表以外にも様々な因子が存在し、それらの均衡が崩れることで起こります。
原因
主な原因は以下の通りです。
- ヘリコバクター・ピロリ感染
- NSAIDs乱用
- その他:ストレス・喫煙など
原因の中でも重要なのが、ピロリ菌とNSAIDsになります。
ヘリコバクター・ピロリ菌とNSAIDs潰瘍
Helico(螺旋)bacter(細菌) pylori(幽門)の意味を持ちます。ヘリコ・プターの「ヘリコ」も螺旋って意味です。

って誰かが言ってたら、区切り方は正しくても笑えますね。
経口感染
ピロリ菌は胃の粘膜に傷害を与えます。通常、胃酸は強酸なので細菌は生息不可能です。ヘリコバクター・ピロリ菌は、ウレアーゼと言う酵素を胃酸の中の尿素と反応させ、アルカリ性のアンモニアにすることで周囲を中和してしまいます。

検査について
ヘリコバクター・ピロリ菌がウレアーゼでアンモニアを作り出す際に、二酸化炭素も生じます。これを利用して、ピロリ菌の検査の一つには、尿素を内服する前後の呼気中のCO2を測定する方法があります。この検査を、尿素呼気試験と言います。
その他にも、尿・便などで検出する方法などがあります。
余談
日本人の二人に一人は感染しており、3割程度が害を受けると報告されているので、国民の2割弱が何かしら問題が起きると言うことです。経口感染し、若年者より高齢者の感染率が高いです。学童未満で感染し易く、食器などの共有は注意です。

NSAIDs潰瘍とは
NSAIDs
Non Steroidal Anti Inflammatory Drug(エヌセイズ:非ステロイド性抗炎症薬)は、抗血小板薬や解熱鎮痛などで用います。アスピリン、イブプロフェン、ロキソプロフェンなどに代表されます。
胃粘膜の防御に関わるPG(プロスタグランジン)を合成する酵素となるCOX(シクロオキシゲナーゼ)の阻害などにより潰瘍を引き起こします。
症状
胃潰瘍 | 十二指腸潰瘍 | |
食後痛 | 30%程度 | 15%程度 |
空腹時痛 | 50%程度 | 50%程度 |
腹部膨満 | 40%程度 | 30%程度 |
悪心 | 30%程度 | 20%程度 |
胸焼け・食欲不振 | 40%程度 | 20%程度 |
- 心窩部痛
- 吐血・タール便・貧血(出血時)
>赤血球の中のヘモグロビン(鉄)が胃酸に反応することで、酸化鉄となって黒くなります。赤色の場合は、新鮮血や下血(下部消化管)の可能性が高いです。
合併症
- 消化管穿孔:遊離ガス(free air)を認め、感染などを呈すので緊急で外科的処置を行います
- 消化管出血:出血性ショックなどに陥ります
- 幽門狭窄:胃の出口部が狭窄して排出困難になります
検査・治療
- バリウム造影検査:潰瘍部の造影剤の貯留(ニッシェ所見)
- 上部内視鏡検査
治療
- 生活指導:喫煙・ストレスなどに対して
- 薬物療法:PPI(第一選択)・H2受容体拮抗薬・粘膜保護薬など
- 内視鏡的止血術:クリッピング・焼却・薬剤投与など
- IVR(血管内治療):塞栓術などで止血します
- 外科手術:合併症が認められる場合や内視鏡止血などが困難な際に行います
- 原因除去(NSAIDs中止・ピロリ菌除菌など):ピロリ菌陽性時はPPIと抗生物質を用います
食事制限
きちんと内服などを行っている場合、過度な食事制限は不要だと報告されています。心配になる場合は以下の食品の過剰な摂取には注意しましょう。
- 飲酒
- 脂質
- コーヒー(カフェイン)
- 香辛料
- 炭酸水

急性胃粘膜病変(AGML)について
急に消化器症状などを呈し、胃粘膜に病変を認める疾患の総称です。AGML(Acute Gastric Mucosal Lesion)の主な原因は以下の通りです。
- NSAIDs
- アルコール
- ストレス
- アニサキス
など

寄生虫です。特に多いのは、釣ってきたサバやイカなどを自ら調理して生食することによって感染を起こします。
アニサキスは内視鏡で取り除きます。その他の症状や治療は、NSAIDsの中止や内視鏡など前述した内容と似ています。
今回は「胃・十二指腸潰瘍」について解説しました。
まとめ
- 攻防因子の不均衡で生じます
- 好発部位は胃角部と十二指腸球部です
- 二大因子はピロリ菌とNSAIDsです
- その他ストレス・喫煙なども絡みます
- 胃潰瘍は食後、十二指腸潰瘍は空腹時に比較的痛みます
- その他悪心などを認めます
- 出血が無ければピロリ菌の除菌やNSAIDsの中止などをします
- 出血している場合は内視鏡治療をします
>困難な場合はIVR・手術などを検討します
参照Web:日本消化器病学会
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