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グラム陰性菌(大腸菌・緑膿菌など)の種類・特徴・抗菌薬などについて<看護・国家試験>

2020年11月25日

集中治療室で10年以上働き、ブログを起点に医療情報やお役立ち情報を発信しています。医療学生・新卒看護師向けに分かり易く解説するコンテンツも制作しています!国家試験に合格したのに臨床で上手く使えない…と思っている人は結構多いです。折角学習するのに臨床で活かせないのは勿体無いです。効率的・体系的に学びつつ臨床に活かしましょう!

グラム陰性菌はどんな菌なの?

今回は、こんな声に応えていきます。

参考

グラム陽性菌に関しては「コチラ」を参考にしてくださいね!

この記事は看護学生・看護師は勿論、その他の医療学生・関係者にも通ずる基礎内容です。専門書やガイドラインなどでデータや事実を確認してから執筆しています。学科試験・国家試験・予習復習などに役立ててください!

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【医療学生】iPad・アプリなどを活かした図解ノートによる勉強方法について<看護>


当記事で分かること

  • グラム陰性菌に関して
  • 大腸菌・緑膿菌・レジオネラ菌とは
  • 赤痢菌・コレラ菌・百日咳菌とは
  • チフス菌・パラチフス菌とは

グラム陰性球菌・桿菌について

多くは桿菌(GNR:Gram Negative Rod)です。球菌は淋菌・髄膜炎菌などナイセリア属です。

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グラム陰性桿菌(大腸菌:Escherichia coli

細菌の細胞構造について

菌によって莢膜を持っています。腸内に常在している細菌です。消化吸収に役立つ菌や病原性を持つ菌など様々です。下痢を起こす大腸菌を下痢原性大腸菌と言います。

主な感染症について

  • 肺炎
  • 胆道感染症(胆管結石など)
  • 敗血症
  • 尿路感染症

下痢原性大腸菌

以下の5種類に分けられます。2文字目だけ違います。1文字目はEntero:腸管、3・4文字目はEC:Escherichia coliの意味です。

ポイント

  • 腸管出血性大腸菌(EHEC):Hemorrhagic(O157など)

ベロ毒素産生性大腸菌で、血便を呈します。牛などの家畜に生息し、保菌者より糞口感染します。調理加熱(75℃1分間)で死滅します。接種後週間程度で発症し、毒素排泄を妨げるので止痢薬は禁忌です。時に腎臓の血管を傷害して溶血性尿毒症症候群(HUS:Hemolytic Uremic Syndrome)や脳症を合併します。O157は3類感染症に指定されています。

  • 腸管毒素原性大腸菌(ETEC):Toxigenic

毒素による水様性下痢を呈します。

  • 腸管組織侵入性大腸菌(EIEC):Invasive

菌による傷害で粘血便を呈します

  • 腸管病原性大腸菌(EPEC):Pathogenic

小児の腸管に付着して水様性下痢を呈します

  • 腸管凝集付着性大腸菌(EAggEC):Aggrigative

毒素や付着などによる水様性下痢を呈します

治療

  • 抗菌薬(ニューキノロン系・ホスホマイシンなど)

キノロン系

尿路・腸管感染症などに用いられます。第一世代をオールドキノロン、それ以降をニューキノロンと言ったりもします。核酸合成阻害薬で、DNA合成を阻害します。関節障害などの危険性を持ち、妊婦・小児への投与は原則禁忌となっています。

ホスホマイシン

細胞壁合成阻害薬で、ペプチドグリカン層の合成過程に対して初期段階で効果を発揮します。副作用が比較的少ない抗菌薬とされています。

グラム陰性桿菌(緑膿菌:Pseudomonas aeruginosa

緑膿菌と言えば「水場」です!水回りに生息しているので、患者周囲の水気や拭き残しなどで増殖します。名前の通り、ピオシアニン色素により感染している部分が緑に変色したり、体液が緑色だったりします。

Pseudomonas aeruginosa(シュードモナス・エルジノーサ)を略して「シュード」と呼ばれたり、色調から「ピオ」と呼ばれたりします。病原性は弱いですが薬剤耐性を持ち、日和見感染で問題となります。種々の感染症や敗血症の原因となります。

治療

  • 抗菌薬(必要時多剤併用療法)

ある抗菌薬の薬剤耐性を持つ株(菌)が残ると、その耐性菌が増殖したり、より強い耐性菌となる危険性が考えられるので、多剤で一気に叩き潰します。

MDRP

MDRP(Multi Drag Resistant Pseudomonas aeruginosa)は、緑膿菌に有効な薬剤(カルバペネム系・ニューキノロン系・アミノグリコシド系)に耐性を得た株です。

マクロライド系

  • カルバペネム系:β-ラクタム系の薬剤で、幅広い菌に効果を持つ薬剤です。
  • アミノグリコシド系:蛋白合成阻害薬で、殺菌作用も持ちます。

グラム陰性桿菌(インフルエンザ菌)

肺炎球菌・インフルエンザ菌・汎用

インフルエンザウイルスとは違う「細菌」です。小児の髄膜炎に多く、肺炎・中耳炎などの原因菌にもなります。上気道に常在していて、病原性の強いHib(インフルエンザ菌b型)では髄膜炎が問題となります。現在では不活化ワクチンの接種によって髄膜炎を抑えることが可能となりました。耐性菌が問題となっています。

耐性菌

BLNAR(β-lactamase negative ampicillin resistance)は日本に多いとされます。BLNARとは、グラム陰性菌に効くABPC(アンピシリン)に耐性を持ち、ペニシリン結合タンパク質(PBP:penicillin-binding protein)を変異させた薬剤耐性菌のことを言います。

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グラム陰性桿菌(レジオネラ菌)

4類感染症です。肺炎の原因菌で有名で、土壌や河川などに生息しています。温泉施設など、空調設備や浴槽設備などを介して散布されて集団発生します。肺炎球菌と違ってペニシリン系が無効です。

治療

  • 抗菌薬(ニューキノロン系・マクロライド系など)

マクロライド系

蛋白合成阻害薬で、細菌のリボソームに作用して増殖を抑える静菌作用を持ちます。他剤との併用で弊害が多い薬剤です。

グラム陰性桿菌(赤痢菌)

共に3類感染症に指定されています。アジア地域など、国外での感染例が多いとされます。数日で発症し、以下の症状を呈します。

症状

  • 腹痛・しぶり腹(テネスムス)
  • 悪寒・発熱
  • 膿粘血便(便中に膿を認めます)

治療

  • 抗菌薬(ニューキノロン系・ホスホマイシンなど)

グラム陰性桿菌(コレラ菌)

アジア地域など、国外での感染例が多いとされます。数日で発症し、以下の症状を呈します。

症状

*腹痛・発熱などは無し

治療

  • 輸液・電解質管理
  • 抗菌薬(ニューキノロン系・テトラサイクリン系・マクロライド系など)

グラム陰性桿菌(サルモネラ属:チフス菌・パラチフス菌)

3類感染症に指定されています。腸チフス・パラチフスは海外での感染が多く、チフス菌・パラチフス菌により高熱が持続する稽留熱を呈し、敗血症を引き起こします。症状は似ていて、比較的パラチフスは軽症とされます。潜伏期間は2週間程度で、以下の症状を呈します。

それ以外のサルモネラ属は、国内でも鶏卵やペットから感染して食中毒の原因となることが多いです。

症状

  • 稽留熱
  • 徐脈(熱の割には)
  • 肝脾腫・バラ疹(斑点)
  • 下痢・便秘
  • 意識障害
  • 腸出血・腸管穿孔

治療

  • 抗菌薬(ニューキノロン系・第三世代セフェム系など):陰性桿菌なので第三世代を用います。

セフェム系

β-ラクタム系薬に属します。第一世代から第四世代まで存在します。ざっくりした細菌に対する効力は以下の通りです。

陽性球菌 陰性桿菌
第一
第二
第三
第四

グラム陰性桿菌(百日咳菌)

名前の通り、長期間の咳が特徴的です。小児で好発します。感染力が強く増加傾向で、DPT(-IPV)ワクチン接種を行っていても抗体価の減少などにより発症します。1歳未満では死亡率が高いとされています。

症状

  • 発熱無し
  • 痙咳発作・笛音

数週間に渡る特徴的な痙攣性の咳を起こします。

治療

  • マクロライド系など

 

グラム陰性球菌(淋菌)

これ以降はグラム陰性球菌です。低温に弱い特性を持ちます。性感染症(STD:Sexually Transmitted Infections)で、1週間前後の潜伏期間を経て尿道炎や子宮頚管炎などを起こします。

症状

  • 排尿時痛
  • 違和感
  • 悪臭・膿
  • 不妊
  • 咽頭炎
  • 化膿性結膜炎(垂直感染)

治療

  • 第三世代セフェム系など

グラム陰性球菌(髄膜炎菌)

アフリカなどで多く、国内では激減しています。

治療

  • ペニシリン系など

今回は「グラム陰性桿菌」について解説しました。

まとめ

  • グラム陰性菌の多くは桿菌です
  • 下痢性大腸菌は5種類です
  • 緑膿菌は水場に多く、多剤耐性菌として問題になります
  • レジオネラ菌は施設などで肺炎の原因として問題となります
  • 赤痢菌・コレラ菌は国外アジア圏で多く腹部症状を呈します
  • サルモネラ菌は食中毒の原因となり、中でもチフス・パラチフスは敗血症となります
  • 百日咳は長期間の特徴的な咳を呈します
  • 淋菌と髄膜炎菌は陰性球菌です

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