
今回は、こんな声に応えていきます。
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当記事で分かること
- グラム陽性菌について
- ブドウ球菌とは
- レンサ球菌とは
- 腸球菌とは
- ジフテリア菌とは
- クロストリジウム属とは
<Contents>
グラム陽性球菌とグラム陽性桿菌について
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グラム陽性球菌

多くは通性菌で、酸素の有無に関わらず生息可能です。ブドウ球菌やレンサ球菌は常在菌で、皮膚などを介して感染します。蜂窩織炎の原因にもなります。
- ブドウ球菌:Staphylococcus(スタフィロコッカス)
- レンサ球菌:Streptococcus(ストレプトコッカス)
- 腸球菌:Enterococcus(エンテロコッカス)

蜂窩織炎とは
皮下組織以上の炎症で、感染徴候(腫脹・疼痛・発赤・発熱)を呈します。
グラム陽性桿菌
何種類か存在するクロストリジウム属と、ワクチンで関係してくるジフテリア菌を覚えましょう!
クロストリジウム属
- ボツリヌス菌(C.botulinum)
- 破傷風菌(C.tetani)
- ディフィシル(C.difficile)
- ウェルシュ菌(C.perfringens)
グラム陽性球菌(ブドウ球菌・MRSA)
実際に経験しないと意味不明だとは思いますが、なるべく要点を絞って解説していきます!
ポイント
- 基本的に感染力は弱いので、免疫力の弱くなった患者に感染する日和見感染が原因となります
- 表皮に常在しているので、カテーテルなどの留置時に体内に侵入します
- 黄色ブドウ球菌は腸管毒素(エンテロトキシン)が問題となります
- MRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)は院内感染で特に重要です

コアグラーゼ
ブドウ球菌は、その名の通りブドウの形に似ています。ブドウは「紫」なので、グラム陽性と関連付けられます。通性菌で、以下の2種類になります。
- 黄色ブドウ球菌(コアグラーゼ陽性菌):鼻腔や腸管に常在しています。
- コアグラーゼ陰性ブドウ球菌(CNS:Coagulase Negative Staphylococci):表皮ブドウ球菌などが代表で、鼻腔や皮膚に常在しています。
コアグラーゼとは
コアグラと言う言葉を知っていますか?臨床では、血液が固まると「コアグる」などと言います。コアグラーゼは血漿を凝固させる酵素で、周囲にフィブリンのバリアを形成して食細胞に抵抗します。
簡単に言うと、人にとってコアグラーゼを持っている細菌は厄介ってことになります。

培地の色が黄色くなることが由来で、画像の一番左の様な色になるからです。
MRSA
MRSA(Methicillin Resistant Staphylococcus aureus)とはメチシリンに耐性を持った黄色ブドウ球菌です。メチシリンとは、世界初の抗菌薬と言われるペニシリン系抗菌薬の一つです。
菌名に「S」が付くとその前の抗生剤にsensitive(感受性:効く)で、「R」が付くとresistant(抵抗性:耐性)です。メチシリン感受性黄色ブドウ球菌をMSSAと言います。取り敢えず、「R」が付く菌はヤバイと思いましょう。
特徴
- β-ラクタム系抗生物質は前述したペプチドグリカン層(細胞壁)の合成を妨げて殺菌しますが、MRSAは多くを無効化します
- 肺炎・骨髄炎や経皮的に感染を起こします
- 院内感染で重要視されており、手指衛生やガウンの着用などが大事です
- 原則器材などは患者専用にし、共有する場合は消毒をします
- アルコール・ポピドンヨードなどは効きます
抗生物質
- VCM(バンコマイシン塩酸塩):第一選択
- その他:テイコプラニン・リネゾリドなど
VCMとは
グリコペプチド系の抗生物質で、MRSAや偽膜性大腸炎(クロストリジウムディフィシル)でよく耳にする抗菌薬の一つです。別の機序で細胞壁の合成を阻害して殺菌します。
腸管吸収されないので、偽膜性大腸炎以外では静脈注射を行います。投与が速いとヒスタミンが遊離して、皮膚に紅斑・掻痒感が生じるRed Man症候群を呈し易くなります。一般的には1時間以上の用法となっています。血中濃度も定期的に測定します。
グラム陽性球菌(レンサ球菌・溶連菌)
溶血性連鎖球菌を略して溶連菌と言います。一番有名なA群β溶連菌(GAS:Group A Streptococcus)の多くが化膿性レンサ球菌です。一般的に小児で多いですが、劇症型では30歳以上の成人で多いとされます。
劇症型は、壊死性筋膜炎を起こす人食いバクテリアとしても有名ですが、実際は食うと言うより腐らせる…ですね。その他肺炎球菌や、妊婦ではB群β溶連菌(GBS:Group B Streptococcus)も重要になります。
参考
A群はLancefield分類で、β溶血性は「α」・「β」・「γ」で分けた溶血毒による赤血球の溶け方です。特に覚えなくて良いと思います。
ポイント
- A群β溶連菌は菌によっては莢膜を有し、学童以下の小児で扁桃炎や咽頭炎の原因になり易いです
- 更に全身の発疹を呈すと猩紅熱となります
- リウマチ熱や急性糸球体腎炎の原因にもなります
- B群β溶連菌は膣に生息し、分娩時に胎児に影響することで感染症を呈します
- 肺炎球菌は鼻腔などに生息し、莢膜を持っています。市中肺炎の原因菌で最も多いです
治療
- ペニシリン系抗菌薬:第一選択
グラム陽性球菌(腸球菌)
腸球菌もその名の通り、腸に常在する菌で基本的には無害ですが、院内などでは抵抗力の弱い患者への日和見感染の原因となります。
VRE
バンコマイシン耐性腸球菌(Vancomycin Resistant Enterococci)は、バンコマイシンに耐性を持ちます。
グラム陽性桿菌(ジフテリア菌)
学童未満の幼児に多く、剥がすと出血する扁桃の偽膜や咽頭発赤、頸部リンパ節の腫脹などを認めます。飛沫感染します。増悪すると気道を閉塞して窒息を呈したり、毒素による神経麻痺や心筋炎などを呈します。現在ではDPT・DPT-IPV(三種・四種混合ワクチン)の普及で、接種していれば通常感染しないです。
ポイント
- D:Diphtheria(ジフテリア)
- P:Pertussis(百日咳)
- T:Tetanus(破傷風)
- IPV: Inactivated Poliovirus Vaccine(不活化ポリオ)
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治療
- 血清:毒素除去
- ペニシリン・エリスロマイシン:殺菌
グラム陽性桿菌(クロストリジウム属)
芽胞とは
クロストリジウム属は嫌気性菌で、酸素を嫌います。更に芽胞を持ちます。芽胞は防御力に特化した構造で、不都合な状況に陥った際に細菌内部に形成して逃げ込み、耐え抜きます。環境の都合が良くなると、再度発芽して増殖を始めます。以下の特徴を持ちます。
- 100℃無効
- アルコール耐性
よって、オートクレーブ(高圧蒸気滅菌)では121℃で滅菌します。また、環境は次亜塩素酸ナトリウムで消毒し、流水での手洗いをします。
では、以下の菌を見ていきます!
- ボツリヌス菌(C.botulinum)
- 破傷風菌(C.tetani)
- ディフィシル(C.difficile)
- ウェルシュ菌(C.perfringens)
ボツリヌス菌(C.botulinum)
1gで100万人を致死させられると言われるボツリヌス毒素を産生します。名前の由来は「ソーセージ」で、嫌気性菌なので酸素の無いところで増殖します。

原因(食品)
- 真空パック
- 缶詰・瓶詰
>食品中で発育したボツリヌス菌が毒素を放ち、それを食することで発症します。
- 蜂蜜(1歳未満)
>1歳未満では消化管・腸内細菌叢が未発達で、蜂蜜に含まれた芽胞が腸で発芽して毒性を持ちます。
症状・治療
- 症状:神経麻痺が主体で、視野障害・嚥下障害・呼吸困難などを呈します。
- 治療:気道管理や必要に応じて血清などを使用します。
破傷風菌(C.tetani)
一般的にはDPTワクチン(1968年~)によって予防されますが、抗体価が徐々に下がってきます。また、50年以上前に産まれている場合は抗体を持っていない人が多いです。土壌中に生息しており、中年~高齢者の創傷より侵入して破傷風を発症することが多いです。詳しくは最下部の記事を閲覧ください!
原因
- 創傷感染
症状・治療
- 症状:神経毒による開口障害・顔の引き攣りを経て強直性痙攣・後弓反張などを呈します。初期の開口障害を牙関緊急と言います。
- 治療:抗破傷風免疫グロブリン・ペニシリンG・気道管理・暗室管理(刺激で痙攣を誘発する)など
*発症せずとも、外傷などではワクチンを追加接種する場合もあります。
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破傷風とは?ワクチン・予防接種についてと初期症状・治療などについて<看護>
ディフィシル(C.difficile)
院内感染の問題にも挙がる菌で、抗菌薬などで腸内細菌叢が乱れ、腸内に生息しているディフィシルが増殖して起こります。偽膜性大腸炎の原因菌で、CD toxin(毒素)を産生します。
症状・治療など
- 症状:粘性又は水様性の下痢・腹痛など
- 検査:便検査でCD毒素が検出されます。
- 治療:原因薬剤中止・バンコマイシン内服・メトロニダゾール
- アルコール抵抗性:環境は次亜塩素酸ナトリウムで消毒し、手洗いを励行します。
ウェルシュ菌(C.perfringens)
体内に侵入してガスを生産し、周囲の組織を腐らせ腫脹させます。肉類などの煮込み料理では、食中毒(エンテロトキシン)の原因にもなります。
症状・治療
- 症状:握雪感(気腫)・腫脹・悪臭・疼痛など
- 検査:培養検査・レントゲン(ガス像)など
- 治療:ペニシリンG・外科的処置(洗浄・切断)など

今回は「グラム陽性菌」について解説しました。
まとめ
- ブドウ球菌・レンサ球菌は皮膚に常在します
- 黄色ブドウ球菌はコアグラーゼで食細胞に抵抗します
- MRSA・VREなど「R」が付くと抗菌薬に抵抗を示します
- バンコマイシンはRed Man症候群などを呈すので緩徐に落とそう!
- A群β溶連菌は学童以下で罹患し易く、リウマチ熱・急性糸球体腎炎などの原因となります
- B群β溶連菌は、出産時の胎児感染として重要です
- ジフテリアはワクチン接種により、現代では激減しています
- クロストリジウム属は嫌気性菌で芽胞を持ちます
- 芽胞は耐熱・耐アルコールなどの防御壁です
- 1歳以下では蜂蜜の摂取は禁忌です
- ボツリヌス菌は神経麻痺、破傷風は神経過剰亢進です
- ディフィシルは感染対策が重要です
- ウェルシュ菌はガス壊疽や食中毒の原因となります
- MRSAなどの耐性菌を除く多くのグラム陽性菌はペニシリン系が有効です
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