
今回は、こんな声に応えていきます。
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【医療学生】iPad・アプリなどを活かした図解ノートによる勉強方法について<看護>
当記事で分かること
- 頭部外傷とは
- 代表的な疾患について
- 症状・検査・治療など
<Contents>
頭部外傷とは
字の通り、外力によって頭部に損傷を起こした状態です。次の通り大別されます。
- 一次性損傷:外部エネルギーによる直接的な損傷を指します。脳以外に皮膚や骨の損傷も含みます。
- 二次性損傷:一次損傷によって起きた出血・浮腫などによる損傷を指します。
主な死因は頭蓋内出血による脳ヘルニアや出血性ショックなどで、外部と交通する開放性頭部外傷では感染の危険性が高まります。

- 急性硬膜外血腫
- 急性・慢性硬膜下血腫
- 脳挫傷
- 頭蓋骨骨折
急性硬膜外血腫(AEDH)
AEDH(Acute Epidural Hematoma)は頭蓋骨骨折に伴って、直下の外頸動脈由来の中硬膜動脈が傷付いて血腫を形成することが多いとされます。その他の出血源は、静脈洞などです。
頭蓋骨と硬膜は強く結合していて、硬膜を剥がす様に血腫が広がり、CTでは短く太い凸レンズ状の血腫が特徴的です。
また、受傷後に意識清明期を経て徐々に頭蓋内圧が上昇して意識障害を来すのが特徴的ですが、重症度や合併症によっては受傷後より意識障害が継続します。
- 硬膜動脈・静脈洞など
- 頭蓋骨骨折
- 意識清明期
- CT:凸レンズ状
参考
急性硬膜下血腫(ASDH)
ASDH(Acute Subdural Hematoma)は脳表の架橋静脈や動脈の損傷が原因となることが多く、比較的急速に進行します。脳挫傷を伴うことも多く、その場合は意識障害も強いです。
硬膜とクモ膜は結合が弱く、容易に血腫が広がります。CTでは長く細い三日月状の血腫が特徴的です。
- 脳表の架橋静脈・動脈など
- 比較的急速に進行する
- 脳挫傷を伴うことが多く意識障害が強くなる
- CT:三日月状
外科手術
AEDH・ASDHでは、出血量や頭蓋内圧などに応じて血腫を取り除く手術を行います。これを開頭血腫除去術と呼び、骨を切り取って行います。
術後に強い脳浮腫が予想される場合は骨を戻さずに手術を終え、酷い場合には脳の一部を取り除きます。前者を「外減圧術」、後者を「内減圧術」と呼びます。
脳挫傷
一般的に挫傷とは内部の損傷で、外部に損傷を認めない状態です。内部の脳に損傷を与えているので、脳挫傷と言います。
脳実質の挫滅や微小血管の破綻による出血及び浮腫を認めます。CTでは浮腫と出血が混在して、ゴマ塩状(salt and pepper appearance)の点状出血が特徴的です。
また、衝撃によって脳が揺さ振られることで、場合によっては直撃した対側が損傷することも特徴的です。
- 損傷:脳実質
- 浮腫・出血が混在する
- 時に直撃部の対側に出血する
- CT:ゴマ塩状
慢性硬膜下血腫(CSDH)
軽く頭部を打つなどして徐々に出血をし、被膜に囲まれた血腫が硬膜下に出現して拡大していきます。軽微過ぎて受傷機転の記憶が無いことも多く、アルコールの影響や高齢者に多いです。
1~3ヶ月程度で認知機能障害・頭痛・尿失禁などで発症します。小切開で頭蓋骨に穴を開け、穿頭ドレナージ術によって血腫を排液すると改善します。
- 好発:飲酒家・高齢者など
- 発症:数カ月単位
- 頭痛・認知機能障害など
- 治療:穿頭ドレナージ術
頭蓋骨骨折
頭蓋骨骨折は円みを帯びている円蓋部と、脳神経などが通っている頭蓋底の骨折に大きく分かれます。外部と交通した開放骨折では感染症を起こし易くなります。
- 円蓋部骨折
- 頭蓋底骨折
円蓋部骨折
- 線状骨折:中硬膜動脈を傷付けることで硬膜外血腫の原因となり得ます。
- 陥没骨折:凹状に陥没する骨折です。
頭蓋底骨折
- 前頭蓋底骨折:髄膜を損傷すると髄液鼻漏が起き、更に頭蓋内圧が下がると頭蓋内に空気が入る気脳症を呈します。前方に通う神経に関連する損傷で、嗅覚・視覚障害を起こします。また、眼の周りの血腫も特徴的です。
- 中頭蓋底骨折:髄液耳漏やバトル徴候などが特徴的です。
- 後頭蓋底骨折:後頚部に皮下出血を起こしたり、脳幹損傷によって呼吸抑制を起こしたりします。
注意ポイント
- 髄液漏:鼻汁と間違えて詰物や吸引を行うことで細菌感染を助長します。また、鼻をかむと髄液がより漏れてしまうので禁止します。
*鼻汁との鑑別は、試験紙(下記参照)で糖を確認します。
今回は「頭部外傷」について解説しました。
まとめ
- 傷害の過程で、一次性損傷と二次性損傷に分かれます
- 頭蓋内亢進症状・ヘルニアを押さえよう!
- 急性硬膜外血腫は骨折を伴う凸レンズ状の血腫です
- 急性硬膜下血腫は比較的急激に進行する三日月状の血腫です
- 手術では血腫除去・内外減圧術などを行います
- 脳挫傷は浮腫・血腫が混在しているゴマ塩状の画像所見が特徴的です
- 慢性硬膜下血腫は数カ月単位で頭痛・認知機能障害などで発症します
- 頭蓋骨骨折は髄液漏・気脳症などに注意しましょう
参考
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