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【分娩】5種類の破水の違いと胎位や陣痛などについて解説します<看護・医療国家試験>

2021年11月4日

集中治療室で10年以上働き、ブログを起点に医療情報やお役立ち情報を発信しています。医療学生・新卒看護師向けに分かり易く解説するコンテンツも制作しています!国家試験に合格したのに臨床で上手く使えない…と思っている人は結構多いです。折角学習するのに臨床で活かせないのは勿体無いです。効率的・体系的に学びつつ臨床に活かしましょう!

分娩・陣痛・破水などについて教えて!

今回は、こんな声に応えていきます。

この記事は看護学生・看護師は勿論、その他の医療学生・関係者にも通ずる基礎内容です。専門書やガイドラインなどでデータや事実を確認してから執筆しています。学科試験・国家試験・予習復習などに役立ててください!

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当記事で分かること

  • 分娩・陣痛について
  • 胎位・破水について
  • その他関連用語について

分娩とは

分娩(Labor)は平たく言うと出産のことで、分娩の終始は以下の通りに定義されています。

ポイント

  • 分娩開始:6回/時間以上の陣痛と10分以内の陣痛周期が起きたとき
  • 分娩終了:胎盤などの胎児付属物が娩出されたとき

LDRとは

産科で見掛けるLDRとは、陣痛(Labor)・分娩(Delivery)・回復(Recovery)の頭文字です。陣痛分娩室などとも呼ばれます。個室で出産を行え、施設によって家族の付き添いや宿泊も可能です。

3要素

分娩の3要素

ポイント

  1. 娩出力:陣痛・腹圧
  2. 産道:骨盤・頸管・膣・外陰
  3. 娩出物:胎児・胎児付属物(胎盤・羊水・臍帯など)

陣痛とは

陣痛(Labor)はとても痛そうなイメージだと思います。これは子宮が収縮して胎児を外に押し出そうとする生理現象で、平滑筋運動なので意図せず起きてしまいます。これに腹圧が加わることで「娩出力」が増します。

子宮にはアドレナリン受容体(β₂)が関わっていて、この受容体を刺激すると弛緩(子宮収縮抑制)に働き、薬剤で言うところの「張り止め」の作用を起こします。対して、PG(プロスタグランジン)やオキシトシンは子宮収縮に働き、陣痛を促進します。

分娩陣痛

ポイント

  • 前駆陣痛(偽陣痛):分娩開始前の陣痛のこと
  • 分娩陣痛:6回/時間以上の陣痛と10分以内の陣痛周期のこと
  • 後陣痛:分娩終了後の子宮復古時の陣痛のこと

薬剤(例)

  • リトドリン:子宮収縮を抑制する薬剤で、アドレナリンβ₂受容体を刺激して平滑筋(子宮)収縮を抑えることで切迫早産に用いられます。β₂受容体を刺激するので、頻脈(動悸)・火照り・手の震えなどが副作用として挙げられます。
  • オキシトシン(アトニン®):下垂体後葉ホルモンとして子宮収縮を起こします。分娩誘発・陣痛促進・子宮止血などに用いられます。オキシトシンは射乳にも関わるので、母乳を与える際に産後に子宮が収縮する「後陣痛」が助長されます。

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子宮口開大とは

<イメージ>

陣痛が起きると、通常は閉じている子宮の「入口」が徐々に開いていきます。子宮口全開大とは9~10cmになることと定義されています。その後、段階的に胎児・胎盤などを娩出していきます。

分かり易く?言うと、排便の際に肛門が開くイメージです。

分娩の経過について

分娩全体は4期まで、分娩所要時間は3期までが含まれます。一般的に初産婦の方が産道が硬く時間が掛かります。初産婦で12時間前後、経産婦で6時間前後です。身近な物で言うと、初めて風船を膨らませるよりも一度膨らませた風船の方が抵抗が和らいで、簡単に膨らむイメージですかね!

ポイント

  1. 分娩第1期:分娩開始→子宮口全開大
  2. 分娩第2期:子宮口全開大→胎児娩出
  3. 分娩第3期:胎児娩出→胎盤娩出
  4. 分娩第4期:胎盤娩出→2時間まで

分娩時間

分娩時間が一定より長い分娩を遷延せんえん分娩と言って胎児の悪影響を考えて帝王切開を検討します。対して分娩時間が短い場合は、産後の子宮収縮による止血が上手く行われずに出血を起こす可能性が指摘されています。

遷延分娩

  • 初産婦:30時間以上
  • 経産婦:15時間以上

胎位・胎向・胎勢について

胎児の姿勢は下向きで前屈した状態が正常です。胎向(左右)では第1胎向が2/3を占めますが、第2胎向でも問題無いとされます。異常の場合は難産になる可能性が考えられます。

破水とは

破水とは胎児を包んでいる卵膜が破れて、羊水が体外へ排出されることを言います。出産の時には必ず起こる現象ですが、人によって破水のタイミングは違って幾つかの種類に分かれます。

ポイント

  1. 適時破水:子宮口8cm開大以降の正常なタイミングで起きます
  2. 早期破水:分娩開始後子宮口8cm開大までに起きます(=広義の前期破水のこと)
  3. 前期破水:陣痛・分娩開始前に起きます
  4. 低位破水:完全破水とも言って子宮口近くが破れます
  5. 高位破水:高い位置で卵膜が破けた状態です

前期破水(PROM)

前期破水(PROM:premature rupture of the membrane)は分娩開始前に破水を起こすことですが、細かく2種類に分かれます。早産の原因となり、胎児が小さいと合併症を起こし易く特に34週以前では注意を要します。

  • preterm PROM(前期・早期):37週未満
  • term PROM(満期):37週以降

胎児循環について

臍帯下垂・脱出

臍帯が下方(産道側)に位置していることを臍帯下垂と言います。破水を起こすとプカプカと浮かんでいる状態が解除されて、重力によって臍帯が下がり産道に落ち込みます。これを臍帯脱出と言って、臍帯が圧迫されて血流障害を起こすことで胎児が低酸素状態となり徐脈を起こします。

感染症

卵膜が破けているので病原体の侵入によって感染症を起こす危険性が生じます。逆に、前期破水の原因は「絨毛膜羊膜炎」と呼ばれる卵膜の感染症が代表的です。

産徴・排臨・発露とは

産徴

分娩第1期に、人によって産徴さんちょう(おしるし)と呼ばれる頸管粘液・卵膜剥離に伴う出血が起きます。

排臨

排臨はいりんとは陣痛発作時に胎児が陰裂(左右陰唇の間の溝のこと)より確認でき、陣痛が治まると後退して見えなくなる現象のことを言います。

発露

発露はつろとは陣痛に関わらず胎児が確認できる状態のことを言います。


今回は「分娩」について解説しました。

まとめ

  • 規則的な陣痛の出現が分娩の開始になります
  • 3要素は娩出力・産道・娩出物です
  • 陣痛は出産後も子宮復古(回復)の際に起きます
  • 徐々に子宮口が開いて胎児が娩出されます
  • 分娩所要時間は一般的に初産婦>経産婦です
  • 破水は分娩時に必ず起きますが、前期破水は早いタイミングで起きます

参考・引用文献(Web)

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