
今回は、こんな声に応えていきます。
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【医療学生】iPad・アプリなどを活かした図解ノートによる勉強方法について<看護>
当記事で分かること
- 重症筋無力症とは
- アセチルコリン・コリンエステラーゼについて
- 特徴的な症状・治療など
<Contents>
重症筋無力症とは
重症筋無力症(MG:Myasthenia Gravis)は、自己抗体によって神経筋接合部に異常を起こし、筋肉に影響を及ぼす自己免疫疾患です。
筋肉を動かす際には神経伝達物質のアセチルコリンが関与しますが、本疾患の8割以上がアセチルコリン受容体が抗体で阻害されます。
20歳以降の女性に多く、平成28年度の段階で患者数は2万人以上とされています。小児・50歳以降の男性にも発症のピークが見られます。

神経筋接合部とは
字の通り、神経と筋肉が神経伝達物質(アセチルコリン)の受け渡しを行うところです。ざっくりとした運動神経の流れと代表疾患は以下の通りです。
step.1
大脳皮質(上位運動ニューロン)
- 脳血管障害など
step.2
脊髄(下位運動ニューロン)
- ALS(+上位運動ニューロン障害)など
step.3
神経筋接合部
- 重症筋無力症など
step.4
筋運動
- ジストロフィーなど
参考
症状
筋力低下は顔・上肢などに起こり易く、特に眼瞼下垂が一番頻度が高く、次いで四肢の骨格筋とされます。
朝は症状が軽度で、午後になると増悪する特徴を持ちます。また、運動で増悪して休憩により回復します。
- 初発症状:眼瞼下垂・複視
- 易疲労感・球症状(嚥下・構音障害など)
- 重症:呼吸筋麻痺など
クリーゼとは
Crisisに由来し、「危機」と言う意味です。簡単に言うと臓器などが悲鳴を挙げていて生命に関わる状態です。
- 筋無力性クリーゼ:感染・妊娠などを契機に急激に筋力が落ちて、呼吸困難などで状態が悪くなってしまいます。
- コリン作動性クリーゼ:過剰なアセチルコリンによって消化器症状・唾液・徐脈などを初め、最終的に息を吸えずに呼吸困難を起こします。
検査
- 誘発筋電図:筋運動(刺激)によって徐々に電位が弱まるWaning現象を起こします。
- アイスパック試験:氷嚢で2-3分間眼瞼を冷やすと、眼瞼下垂が改善します。但し感度が高い反面、特異度はバラつくので他疾患との鑑別が要ります。
- 自己抗体検査:抗アセチルコリン受容体抗体(8割以上)
- エドロホニウム(テンシロン®・アンチレクス®)試験:短時間作用する抗コリンエステラーゼ薬(抗ChE薬)を投与して眼瞼下垂などの改善を見ます。
- 画像検査:半数以上に胸腺腫の合併を認めるとされます。
解説
- 感度:簡単に言うと感度の高い検査で陰性の場合は、その疾患では無さそうと言う意味です。主に除外診断に用いられます。
- 特異度:簡単に言うと特異度の高い検査で陽性の場合は、その疾患の可能性が高そうと言う意味です。主に確定診断に用いられます。
- 抗ChE薬:アセチルコリンを分解するコリンエステラーゼを阻害して、アセチルコリンを受容体に届かせ易くします。
- 胸腺腫:胸腺は小児期ではT細胞の成熟を担いますが、成人以降は脂肪組織などに置き換わります。自己抗体を産生するなどの原因となります。
治療
- 抗ChE薬:前述した機序で働き掛けます。過剰に働くとアセチルコリンによって消化管活動が亢進したり、流延が酷くなったりするので注意します。
- ステロイド・免疫抑制薬:抗炎症作用・免疫抑制作用による自己抗体の抑制を期待します。
- 血液浄化療法:血漿交換などによって抗体を取り除きます。
- 胸腺摘出術:抗体産生などの原因と考えられる胸腺を取り除きます。
今回は「重症筋無力症」について解説しました。
まとめ
- 神経と筋肉の連絡部分の障害です
- 20歳以降の女性や、小児・高齢男性にも起こます
- アセチルコリンが関与する自己免疫疾患です
- 眼瞼下垂などの眼症状が特に多いです
- 様々なストレス因子や治療薬のコリン作動薬(抗ChE薬)でクリーゼとなる可能性も秘めています
- 抗体検査・薬剤試験などで診断を行っていきます
- 胸腺腫を合併することが多く、摘出術も検討されます
- 治療は大きく分けてアセチルコリンを増やす方法と抗体を防ぐ方法です
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