
今回は、こんな声に応えていきます。
この記事は看護学生・看護師は勿論、その他の医療学生・関係者にも通ずる基礎内容です。専門書やガイドラインなどでデータや事実を確認してから執筆しています。学科試験・国家試験・予習復習などに役立ててください! 国家試験範囲の解説一覧は領域別にHOMEに掲載しています。Kindle電子書籍を活用して無料・低価格で「電子ノート」を作りたい場合は、以下の記事を参考にしてくださいね!
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当記事で分かること
- 術前に準備・確認すること
- 術中に看護師が担うこと
- 術後に観察・援助すること
<Contents>
術前管理について
今回は一般的に教わる待機的手術に関して解説していきます。
ポイント
- オリエンテーション
- 呼吸訓練
- 検査・関連項目
- 薬剤管理
- 術前処置・確認項目
オリエンテーション
ポイント
オリエンテーション(Orientation)とは「適応」・「順応」の意味で、簡単に言えば患者や家族に説明して指導したり、不安を和らげます。
- 手術日時・面会調整など
- 後述する項目も含めて術前後の流れや注意事項など
呼吸訓練
<口すぼめ呼吸>
術後は様々な理由で呼吸機能に障害を来す可能性が考えられます。
原因
- 喫煙歴:分泌物増加・呼吸機能低下など
- 高齢者:身体機能の衰え
- 疼痛:排痰困難など
- 全身麻酔:呼吸抑制・術中安静・人工呼吸器の弊害など
- 気管チューブ:分泌物増加・嗄声など
術後の呼吸器合併症を防ぐ目的で以下の予防策を講じます。
- ハッフィング:排痰訓練です。自分が咳き込む時を思い出してみましょう。「ゴホッ・ウウンッ」などと一気に息を吐き出します。呼気に勢いが無いと喀出できないので、深呼吸後に「ハッ・ハッ」と短い間隔で息を吐き出します。この際に創部痛が出る場合は、タオルやクッションなどで押さえることで和らぎます。
- 口すぼめ呼吸:人工呼吸器のPEEP(呼気終末陽圧)効果に相当し、気道内圧を高めることで気道を広げて呼吸を楽にします。特に呼出障害を来す喘息・COPD(慢性閉塞性肺疾患)や、術後の無気肺予防などでは効果的です。ローソクの火を消さない程度に吹きますが、病室では手掌・紙などを目標にして長く吹きます。
- 腹式呼吸:横隔膜を動かすことで効果的に肺を使います。
- 早期離床(説明):治療以外での安静は呼吸機能の他にも、せん妄・イレウス(腸管麻痺)・入院期間の延長などのデメリットが増えてしまいます。

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トライボール・トリフローなどは吸気の練習ですが、目視で確認できます。
検査(関連項目)
- 血液型・不規則抗体・ヘモグロビン(輸血準備など)
- 腎機能(尿量・輸液・造影など)
- 凝固機能(出血・抗凝固薬・抗血小板薬など)
- 心電図・胸部レントゲン・その他画像検査
薬剤管理
- 術前・術中投与薬:抗生剤など
- 抗血小板・抗凝固薬:原則中止
- 輸液・ルート確保・ライン整理など
術前処置・確認項目
必要に応じて以下の処置・確認などを行います。術式などで必要な項目は異なります。
ポイント
- 手術・輸血同意書など
- 剃毛・臍処置・清潔・整容・術衣・排泄など
- 麻酔科医往診・禁飲食指示
- 除去:義歯・アクセサリー類・湿布など
- 出棟準備
- プロフィール(既往・血液型・アレルギーなど)
- バイタルサイン
- 術部・関連部マーキング(術部マーキングは医師が行います)

術中管理について
術中の患者管理は主に麻酔科医が行います。器械出しは執刀医などの補助を行います。外回り看護師は患者の状態を観察しつつ、主に以下の内容に注意しましょう。
病棟看護師は手術の合間に迎えの準備などを行います。
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褥瘡・医療関連機器圧迫創傷
手術中は自ら体位を変えられないので、クッションなどで予防していきます。体位によって好発部位は変わってきます。
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深部静脈血栓症予防(DVT:Deep Vein Thrombosis)
- 弾性ストッキング(ES:Elastic Stockings)
- 間欠的空気圧迫法(IPC:Intermittent Pneumatic Compression)
ポイント
足の運動を行わないと血流が滞って血栓が生じ、肺塞栓症(PE: Pulmonary Embolism)などを起こします。特に全身麻酔・麻痺(脳卒中など)などで足を動かせない場合は、ES単独の効果は乏しいとも報告されているので、IPCを単独又は併用します。
肢位・保温
クッションなどで圧迫を取り除き、良肢位にして神経麻痺を防ぎます。麻酔・脱衣などによる体温低下も懸念され、シバリング(身体の震え)を起こします。酸素需要が増したり、低体温による凝固障害も来すので保温していきます。
術後管理について
術後の観察ポイントは以下の通りです。
術中看護・経過の申し送りなど
輸液量・出血量・尿量・酸素・バイタルサイン・創部・ドレーン・検体・麻酔時間・麻薬・麻酔科指示など
帰室直後
バイタルサイン・輸液・鎮痛薬・皮膚観察・創部・ドレーン・環境整備・家族案内など
以降
患者の状態に合わせた呼吸訓練・早期離床・指導など
ドレーン管理
ポイント
術式でドレーンの種類は様々ですが、ドレーンは主に3つの役割を担います。
- 予防的:術後に滲出液などが貯留しない様に、また感染予防の目的で留置します。
- 治療的:気体・体液などを排出させる目的で留置します。
- 情報的:出血・膿(感染)などの情報を知る目的で留置します。
観察ポイント
- 量・性状:通常、血性・淡血性と薄まっていきます。新鮮血・排液量・膿・臭気などに注意して見ていきます。
- 位置:陰圧ドレーン以外では、体腔より下に設置しないと逆流します。疾患・術式でドレーンの設置場所も変わります。また、「cm」・マーキングなどで挿入位置も確認します。
- 陰圧:きちんとドレーンの陰圧が効いているか確認します。
- 固定:事故抜去になると再手術となる場合も考えられます。テープ・環境整備などで予防していきます。
- 閉塞:屈曲・クランプなどによってドレナージが効かなくなります。血塊によって詰まることも多く、ミルキングにより解除していきます。
- 皮膚:テープ固定部・挿入部などの観察を行っていきます。
脳卒中領域などのドレーンは細く、容易に切断されます。チューブ内の圧力で弊害が起きることも有り得るので、ミルキング可能なドレーンか確認しましょう。
術後回復過程について
ポイント
Moore(ムーア)の分類が代表的です。生体反応で覚えると分かり易いです。
傷害・異化期
術後2日程度は侵襲によるカテコールアミン反応などにより、血圧上昇・高血糖などが起こります。抗利尿ホルモンの作用も働いて、尿量は減少して循環血液量を補います。また、蛋白質の異化(分解)が起きます。
転換・異化同化期
術後3日目頃より炎症が改善し、リフィリングと言って尿量が増加する時期になります。
回復・同化期
創の治癒が進み、栄養療法を行えていれば蛋白質の同化(生合成)が始まります。
脂肪蓄積期
脂肪が蓄積して体重が増加し、性機能(月経など)なども戻ります。
リハビリテーション
ポイント
リハビリテーションでは、疾患・分野によって専門のスタッフが居ます。指示次第では看護師によるリハビリテーションも可能です。早期離床を目指しましょう!
- 理学療法士(PT:Physical Therapist):主に姿勢・歩行などの大きな運動に関わります。
- 作業療法士(OT:Occupational Therapist):主に衣類動作・食器動作などの細かな運動(巧緻動作)に関わります。
- 言語聴覚士(ST:Speech Therapist):主に発話などのコミュニケーションと嚥下機能に関わります。
初回離床時は深部静脈血栓症・肺塞栓症などに注意します。
今回は「周術期看護」について解説しました。病院によっては手術までの流れは、記録としてチェックリスト化されています。
まとめ
- 円滑に手術に臨める様に、準備・確認を行おう
- 術後は早期離床を目指して、ドレーンなどの管理を行おう
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