
今回は、こんな声に応えていきます。
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当記事で分かること
- 各体位の特徴と使用方法について
<Contents>
仰臥位
仰臥位は多くの人が就寝する際に行う姿勢ですね。一般的には仰向け、上向きなどと言います。一般的な処置・検査・援助などを行う際の基本的な体勢になることが多いと思います。
骨盤骨折など、横向きで骨盤に負担が出る場合なども基本姿勢となることが多いです。

メリット
仰臥位の利点は、血流が安定して得られることです。肝不全などで肝臓に血流を確保したい場合や、循環不全などで血圧が低い場合など、各臓器障害を避けたい時に適応となります。
血流以外にも腰椎穿刺(髄液)や気脳症(気体)など、圧力の変化が及ぶことで生体にデメリットが懸念される場合などにも検討されます。
デメリット
仰臥位に限ったことでは無いですが、安静にしたままだと筋力低下や褥瘡などの廃用症候群が進みます。仰臥位では頭部・仙骨部・踵部などに褥瘡が好発します。
また、特に人工呼吸器管理中では重力・分泌物・横隔膜運動などが関連して肺胞が潰れてしまう「無気肺」を起こすので、早期離床・体位ドレナージなどが必要になります。
側臥位
側臥位も多くの人が寝返りをする際に行う姿勢ですね。一般的には横向きなどと言います。
安静中の患者の場合、背中の清拭や着替えなどの際には横向きになることが多いです。口腔ケアの際は顔だけ横に向けることで事足ります。
処置では背中に針を刺す腰椎穿刺・硬膜外麻酔や、口腔・直腸より挿入する内視鏡又は座薬などですね。
メリット
側臥位の利点は、定期的に姿勢を左右交互に変えることで褥瘡の予防となる点です。多くの施設が取り入れている基本的な体位変換だと思います。
また、角度によっては痰を誘導して無気肺を改善させる体位ドレナージの効果を期待できます。これによって数多の患者の気道が浄化されて、酸素化が改善されています。
デメリット
前述した廃用症候群の他、褥瘡好発部では耳介部・大転子部(腰部)が多いです。また、循環不全の患者では血圧が容易に変動して低血圧に陥ることも多いです。
その他、パラメータも多少変化するので注意が必要です。
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シムス位
「半腹臥位」・「前傾側臥位」などとも言います。側臥位に似た姿勢ですが、より前傾になっています。
体重で下側の上肢が圧迫されるので、上方又は後方に手を抜きます。上下肢にクッションを挟んで、良肢位を保ちつつ褥瘡を防ぎます。
メリット
肛門部などの診察に用いられる他、マンパワーが足りない時などに後述する「腹臥位療法」の代替療法としても用いられます。背側の換気が改善するなどにより、重度の肺障害を呈してる場合などでは劇的に酸素化を改善させるケースが多いです。
腹臥位
腹臥位も比較的就寝時に行うのでは。伏臥位とも書き、英語の「Prone」とも呼ばれます。一般的には腹這い、下向きなどと言いますね。
背部の手術などで用いられますが、日常ではSIDS(乳幼児突然死症候群)や歯並びなどに関与しているので注意しましょう。
メリット
腹臥位療法が有名です。背側の肺胞が潰れている重症の肺障害などでは、腹臥位にすることで横隔膜運動・含気量・血流量などをコントロールして痰を喀出させると共に酸素化を改善させます。
デメリット
重症患者の場合は生命維持装置が多く、それらに注意を払いつつ引っ繰り返すので、マンパワー(人員)が滅茶苦茶必要です。安全に行うには最低でも5人前後は欲しいところです。
また、姿勢による血流の変化が起こるので、循環不全・頭蓋内圧亢進などでは禁忌となります。長時間行っていると、顔面浮腫・皮膚障害なども比較的よく起こります。胸腹部や膝部などの圧迫を避け、良肢位となる様にクッションを的確に入れていきます。
座位・起坐位
ある程度の筋力が必要となります。ベッドによっては75度程度までが限界なので、自力で難しい場合はクッションを背中などに用いて支持します。
- 座位:90度で座っている姿勢を言います。
- 起座位:更に前傾になって、テーブルなどの支えに寄り掛かった姿勢を言います。
メリット
特に有名なので左心不全の際に行う起座呼吸です。横隔膜が下がって呼吸機能を助け、左心不全では右心系の静脈還流を減らして、肺鬱血を軽減する作用も持ちます。
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デメリット
比較的筋力を使うので疲れ易いです。自律神経が衰えている場合や循環血液量が少ない場合などは低血圧を起こします。
ファーラー・セミファーラー位
座位よりも疲れ難くてリラックスでき、メリットも多いので臨床では比較的よく使われる体位です。
経管栄養・経口摂取などの他、処置では腹腔穿刺など、検査では病室で撮影可能なポータブルレントゲンなどでも用いられます。
- ファーラー位(半座位):45度程度に起こした姿勢を言います。
- セミファーラー位:15~30度程度に起こした姿勢を言います。
メリット
横隔膜が下がって呼吸機能を助け、脳卒中領域では脳浮腫の予防にも用いられます。起坐位と同様、左心不全では右心系の静脈還流を減らして、肺鬱血を軽減する作用も持ちます。
また、高度肥満患者・腹水貯留などでは座位によって腹圧が上がって息が苦しくなるので、そう言った場合にも用いられます。
デメリット
特別無いですが、足側の角度調節やクッションによる支えなどを行わないと、徐々に身体がずれ落ちてきます。
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膝胸位
膝胸位は個人的に出産のイメージが一番強いです。よくドラマなどでも見掛けますよね。読み方を逆にして、「胸膝位」とも言います。
メリット
骨盤の可動性が良く、背部の血管を圧迫しないなどの利点を持ちます。胎児・臍帯の位置を整える目的でも用います。
また、膵癌の中でも膵体尾部に生じる腫瘍の場合は、背部の神経に浸潤して疼痛を来すので、膝胸位を行うことで腹側に重力が掛かって軽減するとされます。
デメリット
基本的に自立している人に行って貰うので、特筆したデメリットは無さそうです。顔が伺えないので、表情の観察やタイミングの調整などは多少難しいと思われます。
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砕石位
砕石位は陰部・産道などの診察・手術時に用いられます。
デメリット
見た通り、羞恥心を伴う体位なので配慮しましょう。また、腹圧が上がって横隔膜運動が制限されることで肺活量も減少します。
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骨盤高位・トレンデレンブルグ体位
骨盤を高くして、頭部を低くした体位です。
メリット
産科で、下垂した臍帯が圧迫されて胎児に酸素が供給できなくなる場合に臍帯の位置を整える際に用いられます。
また、ショック体位とも言って下肢の血流を心臓・脳に集める効果も期待できます。実際は横隔膜挙上による呼吸機能の低下も懸念されるので、下肢だけ挙上することが多いです。
注意ポイント
似た用語で「トレンデレンブルグ徴候」・「トレンデレンブルグ歩行」があります。端的に言うと臀部の筋力障害で、アヒルの様にフリフリと左右に腰を振って歩く現象のことを言います。「動揺性歩行」・「アヒル歩行」とも言います。
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ジャックナイフ位
個人的には、カタカナの体位で一番想像し易い体位です。腹臥位の状態で「へ」の字に腰を高くした体位で、肛門部などの手術で用いられます。
デメリット
横隔膜の運動制限によって換気が妨げられたり、下大静脈などの血管を圧迫することで、静脈血栓症や低血圧を起こし易いです。
蹲踞位
蹲踞位は聴き慣れないですよね!簡単なイメージとしては相撲取りですね。膝を曲げて腰を落とした状態のことを言います。剣道などでも行うので、経験者はイメージし易いと思います。
ポイント
産科では骨盤が広がり、重力も手助けして胎児が娩出され易くなります。但し、産婦が疲れ易く会陰部の観察などが行えなくなります。
ファロー四徴症では、幼児期に蹲踞の姿勢を行うことで血管抵抗などの効果によって低酸素を改善させようとします。
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今回は「体位」について解説しました。
まとめ
- No.6までの体位は基本的な体位です
- 特殊体位は手術室や専門領域で用いられます
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