
今回は、こんな声に応えていきます。

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当記事で分かること
- 肺塞栓症と肺梗塞について
- 深部静脈血栓症とは
- 症状・検査・治療について
<Contents>
肺塞栓症・肺梗塞とは
肺塞栓症(PE:Pulmonary Embolism)又は肺血栓塞栓症(PTE:Pulmonary Thromboembolism)の多くは、深部静脈血栓症(DVT:Deep Vein Thrombosis)と呼ばれる下肢の深部静脈に形成された血栓が塞栓子となって起こります。
それ以外に、機械などで大量に空気を送るなどで生じる空気塞栓や、骨折などで脂肪が血中に流れ出る脂肪塞栓なども原因となります。
そのまま肺動脈が閉塞して、出血性壊死を起こした場合は肺梗塞と呼ばれます。下肺野に多く、肺塞栓症発症者の10%が陥るとされます。

と疑問に思った人は鋭いですね!肺は特殊で、肺動脈からも血液供給が行われています。
- 栄養血管:酸素・栄養素を臓器に届ける役割を担います。肺では気管支動脈です。
- 機能血管:臓器としての役割を果たす血管です。肺では肺動静脈です。
「DVT」と「PTE」を総じて静脈血栓塞栓症(VTE:Venous thromboembolism)と呼びます。
血栓形成
前述した通り、多くは深部静脈血栓症(DVT)で形成された血栓が静脈に乗って肺動脈を塞ぐことで生じます。
主な原因は以下の通りです。
- 血流停滞:長期臥床・長時間座位・肥満・妊娠・下肢麻痺など
- 血管内皮障害:外傷・手術・カテーテル刺激など
- 血液凝固能亢進:妊娠・熱傷・脱水など
*特に長時間の座位で血流停滞を起こすロングフライト(エコノミークラス)症候群は有名です。旅行中に多いので旅行者血栓症とも言います。それ以外でも、災害時の避難生活や車中泊などでも頻度が多いです。
症状
- 疼痛・腫脹・熱感など
- ホーマンズ(Homans)徴候:膝関節を伸ばしたまま足関節を背屈させると疼痛を来します。
*疑われる場合は、下肢エコーなどで血栓の有無を評価します。
予防
DVTは整形外科手術や帝王切開術など、骨盤操作によって血栓を起こし易いとされます。更に左腸骨静脈は右腸骨動脈で圧迫されるので左側に多く、脹脛の裏辺りに位置するヒラメ筋静脈にも好発します。
- 運動:一番の予防になります。下肢は第二の心臓とも言われ、運動によって静脈還流を促進しています。安静中などは、定期的に足背を前後に運動させるだけでも効果が出るとされます。
- 水分:脱水は血管の粘稠度を上げて、血栓形成を助長します。小まめな水分摂取が好ましいです。
- 弾性ストッキング(ES:Elastic Stockings)
- 間欠的空気圧迫法(IPC:Intermittent Pneumatic Compression)
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症状
症状
致死率は急性心筋梗塞より高く、14%と報告されています。心原性ショックを呈した場合は30%まで上がります。次の自覚症状が特徴的です。
- 呼吸困難
- 胸痛
*その他、高率で頻脈・頻呼吸などを認めます。
検査
検査
確定診断として用いられる主要な検査は、以下などになります。
- CT:造影剤を用いることで影を造って血栓の場所を見付けます。
- シンチグラフィー:肺換気には異常は無く、血栓によって肺血流に異常を認めます。
- 肺動脈造影:肺動脈に造影剤を流して血流の途絶を探ります。
その他の指標となる検査所見は次の通りです。
- Dダイマー:ダイマー(Dimer)は二量体の意味で、安定化フィブリンの分解(線溶)により生じます。癌・手術・外傷などでも上昇しますが、血栓の存在を疑わせる指標の一つです。
- 動脈血ガス分析:低酸素血症・低二酸化炭素血症・呼吸性アルカローシスなど
- 心電図:胸痛・頻脈などを呈すことも多く、主に心筋梗塞や不整脈などの鑑別で行います。
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治療
治療
低酸素血症を早急に改善しつつ、血栓を取り除く治療を行っていきます。出血に注意しましょう!
- 酸素投与
- 抗凝固療法:急性期は経静脈投与(ヘパリン)を行います。必要に応じて経口薬(ワーファリン)に切り替えていきます。
重症の場合など、必要に応じて以下の治療なども行います。
- 血栓溶解療法(t-PA・ウロキナーゼ):プラスミノーゲンを活性化させてプラスミンにして血栓を溶かします。
- 侵襲的血栓除去術:外科的・経皮カテーテル的に取り除きます。
- 下大静脈フィルター:残存血栓などが再度肺動脈に飛ぶのを防ぎます。
- 経皮的心肺補助装置(PCPS):生体の心肺機能を機械的に補助します。
- 循環作動薬:ショックなどの際には血圧などを上げる薬剤を用います。
はてな
- t-PA(tissue Plasminogen Activator):「組織プラスミノーゲン活性化因子」の意味で、「t」の前に「r」が付くと遺伝子組替え製品です。血栓に集中的に作用します。
- ウロキナーゼ:全身性に作用するので、t-PAより出血傾向が強いです。
- PCPS(Percutaneous Cardiopulmonary Support):VA ECMOと同義だと思って大丈夫です。時代の流れで色々と呼び方が存在しますが、総じてECLSとも言います。
*ECMO(Extracorporeal Memblane Oxygenation):体外式膜型人工肺
*VA(Venoartetrial):静脈脱血・動脈送血で、主に心肺補助を目的とします。
*VV(Venovenous):静脈脱血・静脈送血で、主に肺補助を目的とします。
*ECLS(Extracorporeal Life Support):体外生命維持装置

今回は「肺塞栓症・肺梗塞」について解説しました。
まとめ
- 多くは深部静脈血栓症(DVT)によって起こります
- 肺梗塞は発症者の10%程度に認め、出血性壊死を起こした状態です
- DVTは大きく「3」種類の原因にまとめられます
- 日常生活などでも起き得るので、運動・水分を心掛けましょう
- 呼吸困難・胸痛が主要な症状です
- 造影CTなどで診断を確定します
- 治療では心肺機能を維持しつつ、血栓の除去を行っていきます
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