
今回は、こんな声に応えていきます。
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当記事で分かること
- 結核とは
- 肺結核症について
- 感染対策について
<Contents>
結核とは
結核菌が臓器に感染して発症し、その多くは肺に好発します。結核と言えば肺結核症を指すことが多く、英名よりTB(Tuberkulose)と呼ばれます。
脊椎など、肺以外の結核感染は肺外結核と言います。リンパや血流に結核菌が乗って広がっていくことで成立します。
日本は先進国でも多く、減少傾向とは言え年間15,000人程度発症し、2,000人程度死亡しています。BCGワクチン(ハンコ注射)で予防していることでも有名です。
ワクチン
ワクチン
BCGはフランス語のBacille de Calmette et Guérin(カルメット・ゲラン桿菌)の略称で、弱毒化した生ワクチン(抗原)を投与して免疫を獲得する方法です。病原体が生きているので、他のワクチンと比較して副反応が起き易いとされます。
ワクチンには色々な種類が存在します。不活化ワクチンは病原体を不活化(死菌)し、トキソイドは毒素を無毒化して投与します。
- 生ワクチン:BCG・風疹・麻疹など
- 不活化ワクチン:日本脳炎・インフルエンザなど
- トキソイド:破傷風・ジフテリアなど
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肺結核症の感染経路について
結核菌はグラム染色で染まらず、抗酸菌染色で染まって酸で脱色しなくなることから由来して、抗酸菌属と呼ばれます。
0.3μmと小さく、感染経路は飛沫核による空気感染です。感染予防に医療従事者はN95マスクを着用して接触します。患者には、必要に応じてサージカルマスクの着用を依頼します。
飛沫感染と空気感染の違いは以下の通りです。
- 飛沫感染:5μm以上の病原体を含んだ微粒子を、数mの範囲で吸い込むことで感染します。
- 空気感染:5μm以下の病原体が空気中に舞い上がって、それを吸い込むことで感染します。咳などで飛沫が無くとも、病原体が存在すれば完成します。
N95マスク
アメリカ合衆国労働安全衛生研究所(NIOSH)の基準を合格した微粒子を防ぐマスクです。
- N:Not resistant to oilの意味で、耐油性無しと言うことです。
- 95:試験粒子を95%以上除去しています。
肺結核症の発症様式と症状について
肺結核症の発症様式は以下の通りです。
- 一次結核
- 二次結核
症状
- 全身症状:発熱・倦怠感・食欲不振など
- 呼吸器症状:咳嗽・血痰など
一次結核
最初に感染して病巣を作った後に発症します。病巣を作ることを初期変化群と言います。
多くは免疫反応によって自然軽快しますが、乳幼児や高齢者などで免疫力が低い場合に好発します。
二次結核
長期間経過した後に、HIV・糖尿病などを切っ掛けにして高齢になって結核菌を抑えていた免疫力が下がり、体内に残っていた結核菌が増殖して発症することが多いです。
肺尖部(上側)に生じ易いとされます。これは酸素分圧が高いのと、肺血流が少ないことでリンパの流れが比較的少なく、結核菌の増殖に有利になる為だと考えられています。

粟粒結核とは
結核菌が血液に乗って全身に運ばれて、様々な臓器に結節性の病巣を作ることを粟粒結核と言います。粟粒とは粟の粒と言う意味で、米粒様に結節が形成されます。
肺結核症の検査と治療について
検査
- 画像検査:CT・レントゲンで、特に上肺野に空洞病変・粒状影などを認めます。
- 喀痰検査:塗沫・培養などによって抗酸菌を同定します。結核菌は胃液で死滅しないので、胃液での検査も可能です。
- 核酸増幅法:PCR法(Polymerase Chain Reaction:ポリメラーゼ連鎖反応)などで、DNA・RNAを検査して遺伝子学的に病原体を特定する方法です。
- QFT検査:BCGとは異なる抗原でリンパ球反応を見る検査です。

空洞病変
結核菌に感染した際に、生体は細胞に閉じ込めて酸素供給を断ち死滅させます。この部分は乾酪壊死と呼ばれ、黄色いチーズに似た組織になっています。
空洞は、この壊死組織が気管と交通した際に生じます。これにより気道を通して排菌され、感染源となります。
ガフキー号数
以前は抗酸菌検査の結果で、菌量によってガフキー(Gaffky)号数が決まり、0号~10号で表記していました。0号が正常で、10号が一番多いです。現在は「-」~「3+」で表記します。
ツベルクリン反応
結核菌由来の抗原を皮内注射すると、細胞性免疫(Ⅳ型アレルギー反応)によって発赤・硬結が見られます。但しBCGワクチン接種者も反応してしまうので、普及している日本での有用性は低いとされます。
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治療
院内感染を防ぎつつ、結核菌に対して数ヶ月に渡って抗結核薬を投薬していきます。
- 収容:結核病棟・陰圧隔離室など
- 多剤併用療法:一部の耐性菌を残さず退治する目的で行います。主な薬剤と代表的な副作用は次の通りです。
- リファンピシン(RFP):肝障害など
- イソニアジド(INH):肝障害・神経障害など
- ストレプトマイシン(SM):腎障害・内耳神経障害など
- エタンブトール(EB):視神経障害など
- ピラジナミド(PZA):肝障害など
*特に「1」・「2」は治療の中心となる薬剤です。
DOTSとは
DOTS(Directly Observed Treatment Short Course)は、直接服薬確認療法などと訳されます。WHOが推奨していて、患者の服薬を確認することで結核菌を完全に死滅させる方法です。
服薬が中途半端だと、その薬剤に対して結核菌が薬剤耐性を得て、再度増殖を起こす可能性が考えられることが一つの理由になります。

陰圧室・陽圧室とは
結核などの空気感染を起こす疾患は圧力を調整した部屋を使用します。逆に清潔を保ちたいクリーンルームに対しては陽圧を保ちます。
- 陰圧室:外部に病原体が出ない様に、部屋を陰圧にすることで中に閉じ込めます。
- 陽圧室:手術室などの清潔・無菌エリアに対しては、陽圧にして雑菌の侵入を防ぎます。
今回は「肺結核症」について解説しました。
まとめ
- 減少傾向の現在でも、結核は年間2,000人の死者と15,000人の新規発症者を記録しています
- 結核の多くは肺で発症し、日本人はBCGで予防接種をしています
- BCGは生ワクチンです
- 肺結核症は空気感染を起こすので、N95マスクや陰圧隔離室などを使用します
- 多くは免疫力の弱まった時に発症する二次結核で、呼吸器感染症状を呈します
- 検査は喀痰や胃液などを用いて、菌の同定を行います。
- 治療は感染対策と薬物療法が主になります
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