
今回は、こんな声に応えていきます。
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当記事で分かること
- 気道・肺について
- 呼吸筋に関して
- 換気量・死腔に関して

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<Contents>
気道と肺の解剖や役割について
気道
- 気道:気道は呼吸をする際の空気の通り道で、呼吸細気管支や肺胞に達してガス交換を行います。空気が声帯を通ることで声を発しているので、気管挿管・気管切開などを行うと特殊な医療器具を除いて発声が出来なくなります。
- 異物除去:鼻腔から入った空気は加湿・加温されると共にゴミなどを除去します。下気道(気管・気管支)は杯細胞により粘液で表面が保護され、線毛によって異物を体外に出そうとします。くしゃみ・咳嗽なども異物を排出する役割を持ちます。
- 誤嚥:通常、嚥下時は喉頭蓋が閉まって誤嚥を防ぎます。何かしらの原因で食物などが背側の食道に落ちて誤嚥を起こした場合は、左主気管支と比較して角度が急で太くなっている右主気管支に入り込み易く、誤嚥性肺炎の好発部位となります。
肺胞
- 肺胞:成人の気管は10cm程度で気管支に移行し、気管支は更に細気管支に枝分かれして肺胞(呼吸細気管支)でガス交換を行います。肺胞は3億個程度存在し、その広さは70m²程度とテニスのシングルスコート半面弱の広さに及びます。
- 呼気終末陽圧:肺胞は吸気時に陰圧となって空気を吸い込んで膨らみます。呼気時には生理的に陽圧が掛かって膨らんでいます。人工呼吸器で必須の基礎知識となる呼気終末陽圧(PEEP:Positive End Expiratory Pressure)とも関連します。
- 肺サーファクタント:Ⅱ型肺胞上皮細胞より肺サーファクタントと呼ばれる界面活性作用を持った物質が分泌されています。これによって組織間液の表面張力を弱めています。減少することで粘着性無気肺となります。

酸素運搬について
赤血球の役割は酸素を各組織に送り届けることで、この機能はヘモグロビンが担っています。肺で酸素と結合して送り届け、同時に二酸化炭素を受け取って肺に運びます。
多くの二酸化炭素は、赤血球の炭酸脱水酵素によって重炭酸イオン(HCO3⁻)になって血漿に移動して運ばれ、肺胞で二酸化炭素に戻って放出されます。
CO2+H2O→H2CO3(炭酸)→H⁺+HCO3⁻
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肺葉・区域
ポイント
肺葉:右側が「3」葉で、左側が「2」葉に分かれています。臨床で特に重要な知識となるアドレナリン受容体と関連させて、左肺を「β」に見立てて「2」と覚えておくと右肺は残りの「3」に絞れるので楽かもしれないです。
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- 区域:肺は更に細かく肺区域として分かれていて、英語の「Pulmonary Segment」の「S」を頭文字にS1~10まで振り分けられています。ざっくりと言って頭側から番号順で、左肺はS¹⁺²の存在とS7が無いのが特徴です。
- 栄養:肺は酸素化を担う組織ですが、肺自体は気管支動脈・気管支静脈によって栄養されています。

胸郭・胸腔
- 胸郭:肺・臓器などを囲っている周囲の骨格です。胸腔を囲っている壁を胸壁と言います。
- 縦隔:ざっくりと心臓・血管・気管・食道などが収まっている中心部周囲のことで、「上」「前」「中」「後」の4区画に分けられます。
- 胸腔(胸膜腔):肺が収まっている場所で、内部の陰圧によって肺が引っ張られる形で膨らみを保っています。少量の胸膜液で摩擦を低減しています。

呼吸運動を担う筋肉・神経について
生体は酸素・二酸化炭素・pHの代謝を行う為に呼吸運動を行います。この呼吸運動を行うのに横隔膜が大部分を担っています。
- 呼吸中枢:橋と延髄に存在し、血液の酸素濃度・二酸化炭素濃度・pHに反応して呼吸を調整します。横隔神経は第3~5頚髄の支配になっていて、特に第4頚髄以上の神経障害では横隔膜が麻痺して呼吸停止になり死に至ります。第4頚髄が死(4)の分岐点とも言われます。
- 自律神経:気道は交感神経に反応して拡張し、副交感神経に反応して収縮します。よりガス交換の需要が高まる活動時に呼吸を楽にしてくれています。

呼吸補助筋として、肋骨の間に存在する肋間筋や胸鎖乳突筋などが挙げられます。呼吸の方法や換気量などで使われる筋肉が変わります。
- 腹式呼吸:横隔膜が主体になって横隔膜の上下運動が行われます。
- 胸式呼吸:横隔膜に肋間筋が加わり、横隔膜の上下運動と胸郭の周囲運動が行われます。
- 努力呼吸:生体ストレスによって息苦しさが酷い場合などは、呼吸補助筋の胸鎖乳突筋なども加わり肩呼吸などが見られます。
瓶内(胸腔内)は常に一定の陰圧で、ゴム状の瓶底(横隔膜)を引っ張ると瓶内の体積が増え、陰圧が強まり肺胞が引っ張られて膨張します。これが横隔膜の収縮による吸気になります。
呼気では横隔膜が弛緩して瓶底が上がり、体積が減って陰圧が弱まります。これにより肺胞の空気を排出します。
死腔と換気量について
- 換気量:成人では、1回の換気で約500mL程度のガスが入りますが、体格でも変わるので(「理想体重」x「8~10」)mL程度と覚えておくと良いと思います。
- 死腔:500mL全てがガス交換に使われる訳では無く、死腔と呼ばれるデッドスペースに150mL程度が死腔換気量として残り、350mL程度が肺胞換気量となります。機能していない肺胞を肺胞死腔と呼び、解剖学的死腔と合わせて生理学的死腔と言います。
今回は「呼吸器」の解剖について解説しました。
まとめ
- 気道は上下に分かれて加湿・加温・異物除去・ガス交換などの役割を各々の組織が担当します
- 声も気流によって出しています
- 右肺は角度・太さの影響で異物が落ち込み易いです
- 肺葉は右側「3」葉、左側「2」葉になっています
- 胸腔内圧は常に陰圧で、吸気で強まり呼気で弱まります
- 呼吸運動は横隔膜が呼吸筋の大部分を担っています
- 呼吸中枢は橋・延髄で、横隔神経は第3~5頚髄です
- 呼吸調節は血液の酸素・二酸化炭素濃度とpHで調整されます
- 成人の一回換気量は500mL程度で、150mL程度は死腔に収まります
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