
今回は、こんな声に応えていきます。
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【医療学生】iPad・アプリなどを活かした図解ノートによる勉強方法について<看護>
当記事で分かること
- クモ膜下出血とは
- 脳脊髄液について
- 脳動脈瘤について
- 症状・検査・治療など
<Contents>
クモ膜下出血とは
中枢神経系は頭蓋骨の下の髄膜で保護されていて、髄膜は外側から硬膜・クモ膜・軟膜で構成されています。
その中のクモ膜の下に出血した場合をクモ膜下出血と言います。クモ膜の下に存在するクモ膜下腔には脳脊髄液(CSF:Cerebrospinal Fluid)が流れていて、脳が浮かんでいます。
40歳以降に好発し、多くは脳動脈瘤によって起こります。原因は以下などです。
- 脳動脈瘤破裂
- 脳動静脈奇形(AVM:Cerebral Arteriovenous Malformation)
- もやもや病
- その他:外傷性クモ膜下出血など
脳脊髄液について
脳脊髄液は、脳室の脈絡叢で1日に500ml程度産生されます。実際に循環している量は150ml程度なので、1日に3回程度入れ替わっていることになります。

以下は脳脊髄液の分泌・吸収の一連の流れです。この過程が障害されると脳脊髄液が多くなって水頭症になります。
分泌
- 脈絡叢(側脳室・第三脳室・第四脳室)
経路
- 側脳室
- モンロー孔
- 第三脳室
- 中脳水道(シルビウス水道)
- 第四脳室
- マジャンディ孔・ルシュカ孔・脊髄中心管
吸収
- クモ膜下腔(クモ膜顆粒)>静脈洞

脳動脈瘤とは
動脈瘤は嚢状・紡錘状の形を呈し、動脈分岐部に多いとされます。動脈瘤の形成には先天的な中膜の欠損部に血圧などの因子が関与していると考えられています。特に嚢状が多く、幾つかの動脈の連絡路となるWillis動脈輪の領域に好発します。
- 前交通動脈
- 内頚動脈-後交通動脈分岐部
- 中大脳動脈
脳は左右の内頚動脈と椎骨動脈の4本で栄養されています。椎骨・脳底動脈は脳幹や小脳などを背負っている様に走行し、後大脳動脈などに派生しています。
内頚動脈からは前・中大脳動脈などが派生し、内頚動脈系と後大脳動脈(椎骨脳底動脈系)が後交通動脈で連絡しています。
症状・検査・治療について
症状
- 頭痛:バットで殴られるなどと表現される激痛を呈します
- 眼症状:内頚動脈系の動脈瘤では動眼神経や視神経を圧迫することで起きます
- 髄膜刺激症状:項部硬直・Kernig徴候・Brudzinski徴候など

合併症
- 再出血:24時間以内に多く、合併症の中でも最も予後を悪くするとされます。
- 脳血管攣縮(vasospasm):スパズムとも言われ、血液の影響で起きる血管の狭窄によって脳虚血・脳梗塞を起こします。特に1週間頃より好発しますが、3日目以降より2週間程度までは注意します。
- 正常圧水頭症:歩行障害・認知症・尿失禁を三大症状とし、治療はシャント(短絡)を造設して脳脊髄液を別のところに誘導します。
検査
- CT:頭部CTで脳脊髄液の通り道に出血(高吸収域:白)を認め、特にヒトデ型(ペンタゴン=六角形)に見えるのが特徴的です。
- 髄液検査:画像で診断が困難な場合などに、頭蓋内圧亢進による脳ヘルニアの合併に注意して腰椎穿刺を行います。
*その他画像検査:MRI・造影CT・血管造影など
治療
- 血圧管理:カルシウム拮抗薬などで管理します。怒責などにも注意します。
- 刺激回避:術前は再出血予防に暗室などにして、不要な刺激を極力回避します。
- 鎮痛・鎮静:再出血予防に必要に応じて行います。
- 抗脳浮腫薬:高張グリセロールなどによって浸透圧を調節し、利尿を促して脳浮腫(脳圧)を軽減します。
- 侵襲的治療:動脈瘤クリッピング術(開頭手術)・コイル塞栓術(経皮的血管内治療)など
- tripleH療法:循環血液量増加(hypervolemia)・人為的高血圧(hypertetnsion)・血液希釈(hemodilution)

tripleH療法
脳血管攣縮を予防する目的で、血液・血圧を人為的に上げて粘稠度を希釈によって軽減する方法です。その他以下の方法などが挙げられます。
- 脳槽・脳室・腰椎ドレーン:原因として血液成分も影響しているので、排液や場合によっては洗浄を行います。
- 血腫溶解療法:ウロキナーゼ・rt-PAなどを髄腔に投与して血腫を溶かします。
- ファスジル塩酸塩(エリル®):血流を良くして血管攣縮を予防します。反面、出血を助長するので止血確認が必須となります。
- オザグレルナトリウム:24時間持続投与します。脳血栓症でも使用しますが、投与方法が違うので注意です。

ベッドのUpDownなどによって定点が変わってしまうので、実習の際は注意しましょう。
ポイント
脳神経の疾患なので、意識障害が多く自ら抜く患者も多いです。抜けたら再手術なので、注意しましょう!
- 性状:最初は血性ですが、徐々にキサントクロミー(黄色)に薄まってきます。急激に多量の血性排液が出る場合は再出血の可能性が高いです。
- 量:1日の髄液産生量の500mlが一つの目安ですが、病状や灌流の有無でも違うので指示を仰ぎます。
- 液面:液面の位置で頭蓋内圧が分かります。正常は20cmH2O未満で、動脈の拍動に伴う液面の動きが消えた場合は閉塞の可能性を考えます。
- 設定:ドレーンの設定圧を確認して外耳孔(0点:基準点)と大きく違わない様に気を付けます。
- 洗浄:脳槽洗浄(頭蓋内灌流)を行っている場合は「+α」でIn量などを観察しますが、臨床向きなので割愛します。
- ミルキング:原則禁忌です。先端が脳に吸着して傷付けたり、ドレーンが細く切れ易いです。
今回は「クモ膜下出血」について解説しました。
まとめ
- 40歳以降で、8割程度が動脈瘤によって起きます
- クモ膜下に出血を起こして脳脊髄液が血と混ざります
- 血が髄膜を刺激して特徴的な徴候や激痛などを起こします
- 脳脊髄液は150ml程度で、1日500ml程度産生されます
- ウィリス動脈輪に好発します
- 3大合併症の管理・徴候に注意しよう!
- 不必要な刺激や体位などには注意します
- 動脈瘤に対する治療はクリッピング術やコイル塞栓術などです
- ドレーン管理は臨床向きなので、ざっくり予習して取り敢えず姿勢に気を付けましょう
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