
今回は、こんな声に応えていきます。
この記事は看護学生・看護師は勿論、その他の医療学生・関係者にも通ずる基礎内容です。専門書やガイドラインなどでデータや事実を確認してから執筆しています。学科試験・国家試験・予習復習などに役立ててください! 国家試験範囲の解説一覧は領域別にHOMEに掲載しています。Kindle電子書籍を活用して無料・低価格で「電子ノート」を作りたい場合は、以下の記事を参考にしてくださいね!
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【医療学生】iPad・アプリなどを活かした図解ノートによる勉強方法について<看護>
当記事で分かること
- バイタルサイン測定とは
- 略語について
- 正常値・目的など
<Contents>
バイタルサイン測定とは
バイタルサイン(Vital Sign)は日本語で「生命兆候」と訳されます。生体の状態を把握する上で重要な指標です。現場では「バイタル」と略されることが多いです。
領域・重症度などによってバイタルサインに含まれる項目は様々ですが、まずは基本的な「呼吸」「血圧」「脈拍」「SpO2」「体温」「意識」を押さえていきましょう!
ポイント
一緒に口語も解説していきます。口語とは話し言葉ですね!記録で用いる言葉としては正式な言語では無いので、推奨しないです。
R・RR:呼吸(Respiration)
意外と思われるかもしれませんが、呼吸(R:Respiration)はバイタルサインで最も重要な指標です。呼吸数(RR:Respiration Rate)とも表記されます。成人では20回/分前後が正常で、学童・幼児・乳児と小さくなるほど速くなります。
呼吸は生体の恒常性が崩れた際に代償しようとして、血圧などよりも異常所見として早く出現します。ですので、呼吸数・呼吸様式などに注目しましょう!代償とは何かの肩代わりをすることで、ここを理解するには酸塩基平衡を学習する必要があります。
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【基準値】酸塩基平衡!読み方・緩衝系・式・問題を分かり易く解説します
Check
学生の時に多くを経験するのは難しいので、呼吸様式・呼吸音などは臨床に入って実践で学ぶと良いと思います。色々な種類の呼吸が存在しますが、まずは正常な呼吸を意識して異常に気付き報告するのが大事です。
異常の早期発見に用いる
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SOFAスコアとは?重症率・死亡率を読み解いて看護に活かす方法について
BP:血圧(Blood Pressure)
収縮期血圧・拡張期血圧は、一般では最高・最低血圧などと呼ばれます。モニターなどには英語で収縮期血圧はSBP(Systolic Blood Pressure)、拡張期血圧はDBP(Diastolic Blood Pressure)と表記されます。
NBP又はNIBP(Non Invasive Blood Pressure)は非観血的血圧測定の意味で、通常の血圧測定です。対して観血的動脈血圧測定はABP(Arterial Blood Pressure)と言います。
収縮期は名前の通り心臓が収縮して血液を送り出した際の血管に掛かる圧力で、拡張期血圧は心臓が拡張して血液を充填している際の血管に掛かっている圧力を言います。
血圧は心拍出量と末梢血管抵抗を掛け算した値になります。疾患にもよるので一概に言えませんが、高過ぎると血管障害・出血などを、低過ぎると失神・心停止などを起こします。
140/90mmHgを一つの基準として、詳しくは以下の記事で解説しています。
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【基礎】あなたは正常?血圧・脈拍の数値や計算式など<看護・医療国家試験>
平均血圧
平均血圧は{(収縮期血圧)-(拡張期血圧)÷3}+(拡張期血圧)で求められます。簡単に言うと脈圧 ÷ 3 + 拡張期血圧です。 観血的動脈圧(ABP/A-line)と呼ばれる血管に留置したカテーテルで測定する場合は、カッコ内に表示されます。
一般的な血圧計ではカッコ内は脈拍になっているので注意です。平均血圧が高くても細い血管の動脈硬化が疑われますが、各臓器の血流を反映する非常に大切な指標で、65mmHg程度は欲しいところです。 画像だと123 - 80 = 43(脈圧)なので、43/3≒14となり拡張期血圧80に足すことで94mmHgとなります。正常平均血圧は90mmHg以下とされます。
臓器に届く血流の指標などにする
P・PR:脈拍(Pulse)
脈拍(P:Pulse)は呼吸と同じく、カウントする場合は脈拍数(PR:Pulse Rate)と言います。触診で測る際の脈圧は、収縮期血圧と拡張期血圧の差が大きいほど強く触れます。触知は3本指で軽く触れましょう!
脈圧=「収縮期血圧」ー「拡張期血圧」で、単純に考えると脈圧の上下の原因は以下の通りです。
- 脈圧(↑):収縮期血圧(↑)・拡張期血圧(↓)
- 脈圧(↓):収縮期血圧(↓)・拡張期血圧(↑)
ここでも血圧の式が役に立ちます!主に加齢による動脈硬化などでは血管抵抗の上昇に伴って上がります。心臓が弱ったり、徐脈などでも血圧は下がりますが、その様な持病が無い場合は「末梢血管抵抗」の可能性が高いと考えられます。
ポイント
一般的に成人の基準値は以下の通りです。一般的に体の小さな動物は早くなるので、子どもは心拍数が早いです。ハムスターは1分間に500回も鼓動するそうです。
- 徐脈:60回/分以下
- 頻脈:100回/分以下
端的に言うと心臓が動いていても末端まで血が流れないと脈拍として反映されないので、低血圧・期外収縮などでは心拍数と誤差が出たり、そもそも触れないこともあります。
脈圧(動脈硬化)・不整脈(欠脈)に役立てる
HR:心拍数
心拍数は(HR:Heart Rate)と言います。心拍の場合はHeart Beatですが、一般的に現場では使わないです。心拍数は心臓の動きで、脈拍数は脈の触れる回数のことを言います。
心電図の数値は心拍数となり、触知した数値は脈拍数となります。徐脈と区別して徐伯・頻拍と言いますが、経験的には使い分けることの方が少ないですが一つ覚えておくと良いと思います。

心電図異常(不整脈・心拍数)の早期発見に役立てる
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【不整脈】心電図モニター異常の見方と症状などについて<看護師国家試験>
SpO2:酸素飽和度
飽和度や濃度は全体に溶け込んでいる酸素の量(比率)を測るので、「%」で表記します。血流に光を照射して測定するので、血流が悪いと測れなくなります。 血液ガス分析と言われる検査では、分圧(圧力)を測るので「Torr」・「mmHg」で表記します。
- SpO2:経皮的酸素飽和度の意味で、サチュレーションと呼ばれています。Saturation(飽和度)、percutaneous(経皮)の意味です。指・耳朶などで「経皮的」に測定する方法で、酸素とヘモグロビンの繋がりを見ています。
- SaO2:血液をサンプルに測定する酸素飽和度です。二番目の小文字は液体を表し、大文字は気体を表します。a=動脈血(液体)です。
- PaO2:血液をサンプルに測定する酸素分圧です。1番目のPはpressure(分圧)を意味します(=pO2)。血中に溶け込んでいる酸素を見ています。
- FIO2:「FiO2」と書いている場合も多いですが、正しくは「i」が大文字になります。FIO2の「I」Inspiratory(=吸気)を「i」と書くと、液体扱いになってしまいます。FはFraction(濃度)です。
ポイント
- 健常者:PaO2:97Torr(=mmHg)・SpO2:98%程度
- 老年者:PaO2:80Torr(=mmHg)・SpO2:95%程度
- 呼吸不全:PaO2:60Torr(=mmHg)・SpO2:90%未満
酸素供給・循環不全などの指標にする

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【基準値】酸塩基平衡!読み方・緩衝系・式・問題を分かり易く解説します
【急性呼吸不全】Ⅰ型・Ⅱ型分類や原因・症状・SpO2に関して<看護・医療国家試験>
T:体温(Temperature)
高体温で多いのは「感染症」です。低体温では冬場の症例やホルモンバランスによるものが多いです。
高体温
注意ポイント
感染症の場合は体温上昇期の冷罨法は避けましょう。生体反応でセットポイント(目標体温)を上げて体温を上昇させています。この時にシバリング(悪寒・震え)が生じます。
特に訴えられない患者では、体温が上がり切らずに冷罨法を行うとシバリングが増悪して代謝を亢進させます。上がり切った後に検討しましょう。
その他、熱中症・中枢性高体温・悪性高熱などでも上昇します。中枢性とは中枢神経の障害などで、悪性高熱は薬剤などの影響で起こります。42℃を超えると細胞は死んでしまうので、この様な疾患の場合は冷却を優先します。
低体温
注意ポイント
一般的に低体温で寒い場合は環境調整や布団などを掛けるだけで大丈夫です。
但し、34℃を下回ってくると不整脈が誘発されます。心肺蘇生にも反応が悪くなるので、過度な体温低下には注意しましょう。また、凝固障害も起こすので出血を伴っている場合は要注意です。

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【温冷】罨法の種類・方法・作用・禁忌等を解説します<看護・医療国家試験>
Coma:意識
意識評価は、特に集中治療室・脳卒中領域では非常に重要です。その他の病棟でも「JCS」による評価は必須です。病院に勤める場合は以下の記事で学習しましょう!
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【医療】2種類の意識評価(JCS・GCS)の方法と覚え方について解説します
今回は「バイタルサイン」について解説しました。
まとめ
- 呼吸は徴候として最初に現れます
- 二文字目の「R」はRate(回数)のこと
- 現場では「バイタル」と称されています
- 呼吸・心拍数は小さな子どもになるほど回数が多くなります
- 口語は記録で使わない様にしましょう
- 血圧・意識・呼吸はqSOFAでも重要です
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