
今回は、こんな声に応えていきます。
基礎編から始めているので、基礎を知りたい方は下記記事をどうぞ!
当記事で分かること
- アニオン、カチオンなどのイオンについて
- AG(アニオンギャップ)について
- 代償性変化について
<Contents>
アニオン・カチオンとは
今回はアレルギー反応も出そうなアニオンギャップについて学んでいきます。基礎さえ把握していれば臨床ではかなり戦えるので、余裕が出来たら学ぶと良いと思います。
アニオン(Anion)とは陰イオンのことを言います。
カチオン(Cation)は陽イオンです。
陰イオンは負、陽イオンは正の電荷を帯びています。覚えられない?陰気な兄おん!
・・・・元素記号の右肩に付いている「+」・「-」ですね!イオンは様々な種類が存在していますが、酸・塩基平衡に関しては以下だけ覚えておけば良いと思います。
陰イオン(アニオン):Cl⁻(クロールイオン)、HCO3⁻(重炭酸イオン)
陽イオン(カチオン):Na⁺(ナトリウムイオン)
AG(アニオンギャップ)とは
ポイント
では、なぜ前述したイオンだけ覚えれば良いのでしょう?簡単に言えば、それが【酸・塩基平衡】に於いては大部分を占めているからです。AGの式は以下で求めます。
- AG=[Na⁺]ー[Cl⁻]ー[HCO3⁻]
- 正常値12∓2(mEq/L)
アルブミンの中にはアニオンも入っているので、低アルブミン血症の人には以下の補正式を使います。
補正AG=測定AG+2.5 x(4ー実測Alb)
主要イオンだけ
本来、陽イオンや陰イオンは他にも存在しますが、全てを測定して計算していくのは大変なので主要なイオンに限っています。体液中の陰陽イオンのバランスは等しいので、それら脇役のイオンを省いて計算すると、Na⁺とCl⁻・HCO3⁻の間には12∓2の差が生まれますって意味です。
つまり、脇役イオンの量は陽<陰で、主要イオンの量は陽>陰の関係になっており、主要イオンを計算すると陰イオン(アニオン)とのギャップ(差)が出るのでアニオンギャップと呼ばれています。
*血液中のイオンの組成です。

AGは「代謝性アシドーシス」が見られた際には必ず求めます。
前述した通り、アニオン(陰イオン:Cl⁻・HCO3⁻)のギャップです。そこには呼吸「CO2」の値は含まれず、代謝「HCO3⁻」の値が関係しています。
まず大前提として、代謝性アシドーシスなので、HCO3-が減っています。
- AGが増加して左(HCO3⁻)にシフト
- Clが増加して右(HCO3⁻側)にシフト
上記の様に考えると次の鑑別が上がります。大別して4種類です。
AG開大性アシドーシス
- 乳酸:循環不全などを呈すと嫌気性代謝により乳酸が生じてアシドーシスとなります。敗血症、心停止、壊死、癲癇など。
- ケトン:脂質を分解した際に生じます。飢餓や糖尿病などで過剰に分解されると起こります。
- 中毒:薬物の種類にもよりますが、サリチル酸中毒などで起きます。
- 腎不全:イオンや老廃物の代謝異常で生じます。
高Cl性アシドーシス
主な原因を挙げます。HCO3⁻が減るとCl⁻で穴埋めをする反応が起きます。現場で著しいアシデミアに遭遇した場合は、透析や重炭酸ナトリウムなども考慮して動きましょう。
- 尿細管性アシドーシス:HCO3⁻再吸収障害
- 下痢:腸液(HCO3⁻)の喪失
- 大量の生理食塩水投与など:Cl⁻の量が多かったり、リンゲル液の様にイオンを添加していないなどの理由によります。
AG開大性
補正HCO3⁻と⊿AGを計算します。
⊿(デルタ)とは差のことを言います。補正を行うことで、合併している病態の特定ができます。
- ⊿AG=実測AGー正常AG
-
補正HCO3⁻=実測HCO3⁻+⊿AG
例
- 実測AG(20)の場合は、⊿AG=20ー12=8となります
- 実測HCO₃⁻(16)の場合は、補正HCO3⁻=16+8=24になります
- 補正HCO₃⁻が正常の場合はAG開大性アシドーシスの病態と言えます

AG開大と言うことは、上図のピンク線の通り左にシフトしています。補正HCO3⁻が正常範囲外の場合は混合性の病態を考えます。
代謝性異常
次に適切な代償が生じているかを求めます。
代償性変化の予測式は慢性・急性の違いや各種病態、更には計算式1つ1つに係数の範囲が指定されており、とても多く扱い辛いです。
そこで、代謝性異常が主体の場合は「15」のマジックナンバーを使って代謝性アシドーシスの代償が正常範囲なのかを計算していきます。「15」は、簡単に言うとPaCO2を40mmHg、HCO3⁻を25mmol/Lとして求めた値です。
代謝性変化の予測(代謝性異常の場合)
- 実測PaCO2 ≒ 実測HCO₃⁻+15:代謝性異常
- 実測PaCO2 < 実測HCO₃⁻+15:代謝性異常+呼吸性アルカローシス
- 実測PaCO2 > 実測HCO₃⁻+15:代謝性異常+呼吸性アシドーシス
呼吸性異常
代謝性変化の予測
- 呼吸性アシドーシス:⊿HCO3⁻ = 0.35x ⊿PaCO2 ∓ 3
- 呼吸性アルカローシス:⊿HCO3⁻ = 0.4 x ⊿PaCO2 ∓ 3
- 上記で求めた値を以下の式に入れて値を求める。
- 予測HCO₃⁻=24 - ⊿HCO3⁻ → 最後に以下を求める。
- 予測HCO₃⁻ー実測HCO3⁻ ≒0(呼吸性異常)
- 予測HCO₃⁻ー実測HCO3⁻<0(呼吸性異常+代謝性アシドーシス)
- 予測HCO₃⁻ー実測HCO3⁻>0(呼吸性異常+代謝性アルカローシス)
まとめ
初級編に+αすると、代償性変化を求めるのが難しくなっています。複雑な病態の時は、それぞれ代償性変化を求めて、混合病態を鑑別する必要が出てきます。その内機械で勝手に測って診断してくれると楽になりますね^^v
