
・解離との違いは?
・症状とか治療を教えて!
今回は、こんな声に応えていきます。心臓外科領域の内容になります。
この記事は看護学生・新卒看護師は勿論、未経験領域に臨む臨床看護師にも通ずる基礎内容ですので参考にどうぞ!筆者の経験以外に専門書やガイドラインなどでデータや事実を確認してから執筆しています。 国家試験範囲ですので、学科試験内容にも含まれます。国家試験合格率は全国平均で90%程度です。単位を落とすと学費が余計に掛かってしまいます。 この記事は国家試験範囲(+α)程度の内容に絞って、突っ込んだ内容はなるべく別記事でしています。是非参考にして「単位取得」・「合格」に役立ててくださいね。
本記事の内容について
・大動脈瘤の形状など
・大動脈解離との違いとは
・症状や治療などについて
1.大動脈瘤(aortic aneurysm)
大動脈瘤は限局的に血管が拡張した状態です。60歳以降に多いとされ、大半が「動脈硬化」で、その他に「マルファン症候群」などが原因として挙がります。血管が脆弱し、圧力が加わることで生じます。ほとんどの場合は無症状で、破裂すると「致死的」です。
マルファン症候群
先天性結合組織異常で、常染色体優性遺伝です。組織が脆弱し、大動脈・網膜・骨などに異常を来します。結合組織については、ざっくりと以下の記事で説明しています。
部位
・TAA(胸部大動脈瘤):thoracic aortic aneurysm
・TAAA(胸腹部大動脈瘤):thoracoabdominal aortic aneurysm
・AAA(腹部大動脈瘤):abdominal aortic aneurysm
腹部大動脈瘤が比較的多いです!
>形状・分類
形状・病理学的分類は次の画像の通りです。
形状は見た通りです。真性と仮性の違いは、動脈の3層構造の違いになります。真性では3層構造は存在(又は一部消失)しています。仮性では内膜と中膜が破綻し、外膜の一部や被膜により構成されています。
>症状
多くの場合は破裂による激痛と出血、破裂前の動脈瘤による圧迫症状を来します。症状が強いにも関わらず、血液漏出が無い場合は切迫破裂と称します。
圧迫症状では、反回神経麻痺による嗄声、交感神経麻痺(ホルネル症候群:縮瞳・眼瞼下垂など)、肺への影響による血痰、消化管の影響による通過障害やイレウスなどです。
>反回神経とは

反回神経
反回神経は迷走神経が大動脈弓や鎖骨下動脈まで降りてきた後に、反転して喉頭の方へ上行していきます。声帯の動きなどに関係し、近位臓器の影響で麻痺を起こすと嗄声などが出現します。
ここでは大動脈瘤による圧排が原因となります。喉頭鏡や内視鏡などで生体の運動障害が見られます。交感神経も付近を走行しています。
検査
造影CT・MRI・大動脈造影など
>治療
5cmを越えてくるまでは厳重な血圧コントロールを行います。侵襲的治療は以下の通りです。
・ステントグラフト内挿術(血管内治療):経皮的にカテーテルで、ステントグラフト(画像参照)を挿入します。瘤の血流が途絶え、血栓化して縮小します。
>胸部大動脈ステントグラフト治療:TEVAR(thoracic endovascular aortic repair)
>腹部大動脈ステントグラフト治療:EVAR(endovascular aortic repair)
・人工血管置換術(外科治療):開胸し、筒状の人工血管を縫い合わせて血行再建をします。
2.解離性大動脈瘤(aortic dissection)
中膜が2層に分断され、本来の血管(真腔)とは別に中膜の間に新たに生じた「偽腔」を形成し、そのまま血管が拡張していく病態です。各動脈の分岐部に重なることで様々な症状を呈します。
>分類
DeBakey:ドベーキー分類
Ⅰ型 | Ⅱ型 | Ⅲ型 | Ⅳ型 |
上行~腹部大動脈に及ぶ | 上行大動脈限局 | 下行大動脈限局 | 下行~腹部大動脈に及ぶ |
Stanford:スタンフォード分類
A型 | B型 |
上行大動脈に及ぶ | 上行大動脈以外に及ぶ |
予後不良 | 比較的良好 |
>検査
大動脈瘤と同様に、造影CTなどで診断します。偽腔開存型や偽腔閉鎖型などの分類が存在しますが、開存している方が血流により破裂など増悪する危険性が高いです。ULP(ulcer like projection)型は閉塞していますが、真腔との交通により増悪する危険性の高いものです。
>症状
出血・激痛などの他に、上行大動脈より心臓に向かって解離することで大動脈弁閉鎖不全症や心タンポナーデを起こします。また、解離による各動脈分岐部などの圧迫・閉塞症状によって冠動脈病変(心筋梗塞など)、腹腔動脈病変(消化器症状など)、腎動脈病変(腎不全など)とそれ以外にも様々な症状を呈します。
>治療
血圧は100≦BP≦120mmHgの範囲でのコントロールが推奨されています。
閉塞・圧迫症状による四肢と左右での血圧差に注意します。スタンフォードB型では保存的治療が一般的ですが、疼痛は血圧を上げてしまうので適切に鎮痛し、安静に見ていきます。
スタンフォードA型は外科治療を検討します。第一選択は人工血管置換術ですが、ステントグラフト内挿術なども場合によって行います。
今回は、「大動脈瘤」と「大動脈解離」について解説しました。
まとめ
・60歳を越えたら大動脈瘤(高血圧)には注意しよう
・圧迫(閉塞)により様々な症状を呈します
・神経や血管の走行を確認してみよう
・瘤5cmを越えは危険!ステントグラフトと人工血管置換術が主な手術になる
・解離は中膜の分裂による…分類を覚えよう
・上下肢や左右の血圧差に気を付けよう

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