
今回は、こんな声に応えていきます。心臓外科領域の内容になります。
この記事は看護学生・看護師は勿論、その他の医療学生・関係者にも通ずる基礎内容です。専門書やガイドラインなどでデータや事実を確認してから執筆しています。学科試験・国家試験・予習復習などに役立ててください! 国家試験範囲の解説一覧は領域別にHOMEに掲載しています。Kindle電子書籍を活用して無料・低価格で「電子ノート」を作りたい場合は、以下の記事を参考にしてくださいね!
-
-
【医療学生】iPad・アプリなどを活かした図解ノートによる勉強方法について<看護>
当記事で分かること
- 大動脈瘤の形状など
- 大動脈解離とは
- 症状・治療などについて
<Contents>
大動脈瘤(aortic aneurysm)とは
大動脈瘤は限局的に血管が拡張した状態です。60歳以降に多いとされ、大半が「動脈硬化」で、その他に「マルファン症候群」などが原因として挙がります。血管が脆弱し、圧力が加わることで生じます。ほとんどの場合は無症状で、破裂すると「致死的」です。
マルファン症候群とは
先天性結合組織異常で、常染色体優性遺伝です。組織が脆弱し、大動脈・網膜・骨などに異常を来します。
関連記事をCHECK!
-
-
【人体構造】4つの組織と細胞小器官・核分裂について<看護師国家試験>
部位
- TAA(胸部大動脈瘤):thoracic aortic aneurysm
- TAAA(胸腹部大動脈瘤):thoracoabdominal aortic aneurysm
- AAA(腹部大動脈瘤):abdominal aortic aneurysm
腹部大動脈瘤が比較的多いです!
大動脈瘤の形状・分類について
形状・病理学的分類は次の画像の通りです。形状は見た通りです。真性と仮性の違いは、動脈の3層構造の違いになります。真性では3層構造は存在(又は一部消失)しています。仮性では内膜と中膜が破綻し、外膜の一部や被膜により構成されています。
大動脈瘤の症状・治療について
多くの場合は破裂による激痛と出血、破裂前の動脈瘤による圧迫症状を来します。症状が強いにも関わらず、血液漏出が無い場合は切迫破裂と称します。
圧迫症状では、反回神経麻痺による嗄声、交感神経麻痺(ホルネル症候群:縮瞳・眼瞼下垂など)、肺への影響による血痰、消化管の影響による通過障害やイレウスなどです。
5cmを越えてくるまでは厳重な血圧コントロールを行います。侵襲的治療は幾つか存在します。
- ステントグラフト内挿術(血管内治療):経皮的にカテーテルで、ステントグラフト(画像参照)を挿入します。瘤の血流が途絶え、血栓化して縮小します。
- 胸部大動脈ステントグラフト治療:TEVAR(thoracic endovascular aortic repair)
- 腹部大動脈ステントグラフト治療:EVAR(endovascular aortic repair)
- 人工血管置換術(外科治療):開胸し、筒状の人工血管を縫い合わせて血行再建をします。
反回神経とは

反回神経
反回神経は迷走神経が大動脈弓や鎖骨下動脈まで降りてきた後に、反転して喉頭の方へ上行していきます。声帯の動きなどに関係し、近位臓器の影響で麻痺を起こすと嗄声などが出現します。
ここでは大動脈瘤による圧排が原因となります。喉頭鏡や内視鏡などで生体の運動障害が見られます。交感神経も付近を走行しています。
検査
造影CT・MRI・大動脈造影など
関連記事をCHECK!
-
-
【学生】病院看護師が比較的よく遭遇する画像検査の種類について解説します
解離性大動脈瘤(aortic dissection)とは
大動脈解離とも呼ばれます。中膜が2層に分断され、本来の血管(真腔)とは別に中膜の間に新たに生じた「偽腔」を形成し、そのまま血管が拡張していく病態です。各動脈の分岐部に重なることで様々な症状を呈します。
解離性大動脈瘤の分類について
DeBakey:ドベーキー分類
Ⅰ型 | Ⅱ型 | Ⅲ型 | Ⅳ型 |
上行~腹部大動脈に及ぶ | 上行大動脈限局 | 下行大動脈限局 | 下行~腹部大動脈に及ぶ |
Stanford:スタンフォード分類
A型 | B型 |
上行大動脈に及ぶ | 上行大動脈以外に及ぶ |
予後不良 | 比較的良好 |
解離性大動脈瘤の検査・症状について
大動脈瘤と同様に、造影CTなどで診断します。偽腔開存型や偽腔閉鎖型などの分類が存在しますが、開存している方が血流により破裂など増悪する危険性が高いです。ULP(ulcer like projection)型は閉塞していますが、真腔との交通により増悪する危険性の高いものです。
出血・激痛などの他に、上行大動脈より心臓に向かって解離することで大動脈弁閉鎖不全症や心タンポナーデを起こします。また、解離による各動脈分岐部などの圧迫・閉塞症状によって冠動脈病変(心筋梗塞など)、腹腔動脈病変(消化器症状など)、腎動脈病変(腎不全など)とそれ以外にも様々な症状を呈します。
関連記事をCHECK!
-
-
【心嚢液】心タンポナーデの原因・症状・治療など<看護師国家試験>
血圧は100≦BP≦120mmHgの範囲でのコントロールが推奨されています。閉塞・圧迫症状による四肢と左右での血圧差に注意します。スタンフォードB型では保存的治療が一般的ですが、疼痛は血圧を上げてしまうので適切に鎮痛し、安静に見ていきます。スタンフォードA型は外科治療を検討します。人工血管置換術などを検討します。
今回は、「大動脈瘤」と「大動脈解離」について解説しました。
まとめ
- 60歳を越えたら大動脈瘤(高血圧)には注意しよう
- 圧迫(閉塞)により様々な症状を呈します
- 神経や血管の走行を確認してみよう
- 瘤5cmを越えは危険!ステントグラフトと人工血管置換術が主な手術になる
- 解離は中膜の分裂による…分類を覚えよう
- 上下肢や左右の血圧差に気を付けよう
最新記事