
今回は、こんな声に応えていきます。

この記事は看護学生・看護師は勿論、その他の医療学生・関係者にも通ずる基礎内容です。専門書やガイドラインなどでデータや事実を確認してから執筆しています。学科試験・国家試験・予習復習などに役立ててください!
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【医療学生】iPad・アプリなどを活かした図解ノートによる勉強方法について<看護>
当記事で分かること
- 波形の意味について
- 波形と波形の間隔について
- 心電図の読み方について
- 不整脈について
<Contents>
心電図
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心血管系の位置と構造って?血圧の計算方法なども解説します<看護・医療国家試験>
波形・間隔
P波
P波は、心房の興奮の始まりです。刺激伝導系のリーダーとなる洞結節が、正常に機能しているかを確認できます。
実は、左房にも伝導路は出ています。
Q波
Q波は心室の興奮の始まりです。QRS終了までにはプルキンエ線維に伝わります。QRSを見ることで、心室がきちんと動いているかの確認ができます。
T波
T波は心臓の休憩時間です。
これらを1分間に重ねた回数だけ、心拍数となって現れます。
心電図の波の間隔を把握するには、1マスが何秒になるのかを覚えましょう。紙送り速度で1マスの時間は変化します。一般的には小さなマス1つで0.04秒、大きなマス1つで0.20秒です。
PQ間隔
0.16∓0.04秒
ヒス束前までの興奮なので、房室ブロックなどに関係します。
QRS間隔
0.1秒以下
心室の興奮なので、PVCや脚ブロックなどに関係します。
QT間隔
0.40∓0.04秒
QT間隔は電解質濃度、心室性不整脈などに関係します。
RR間隔
RR間隔はリズムが一定間隔で繰り返しているのかと、心拍数を求める際に使います。
大きなマス5個で1秒なので、5マス間隔の場合は一分間に60回です。また、300個で一分間なので、簡単に求めたい場合はマスの数で割ってください。
RR間隔が3マスだった場合は300/3=100回/分になります。
不整脈
上室性不整脈
健康な人でも呼吸によって不整脈は起きますが、ほとんどが迷走神経を介した生理的現象です。子どもでも多く見られます。
上室性不整脈は上室(心房)なので、多くはP波に注目します。
心房性期外収縮(PAC)
PACは健常人でも見られます。加齢で増加し、自覚症状が無ければ様子を見ます。RR間隔が乱れ、P波が早く出現します。
発作性上室頻拍(PSVT)
次の3種類に分けられます。発作性なので突然起こります。RR間隔は正しく、1分間に150回程度の心拍数を呈します。
- AVNRT(房室結節リエントリ頻拍):半数以上のPSVTに該当します。
- AVRT(房室リエントリ頻拍)
- AT(心房頻拍)
心房細動(Af)
心房で細かな電気的興奮が生じている状態です。不規則に心室に伝わり、P波がはっきりせず波打ち、RR間隔も不整です。血液が滞ることで血栓を生じ易く、特に左房に飛び出た空間の左心耳にでき易いです。血栓が飛ぶと、脳梗塞などの塞栓症を起こします。
心房粗動(AFL)
細かく電気信号が起きていますが、規則的に心室に伝わるので、多くはRR間隔が等しくなっています。P波はノコギリ状になっています。
Ⅰ度房室ブロック
Ⅰ度は、PQ間隔の延長です。上図を見ると分かり易いですが、ヒス束より上の障害になります。
Ⅱ度房室ブロック
Ⅱ度は2種類です。
ウェンケバッハ型(モビッツⅠ型)は、徐々にPQ間隔が延長して、QRSが最終的に消失します。これもヒス束より上の障害でPQ間隔に異常をきたしています。
モビッツⅡ型はペースメーカーの適応となります。PQ間隔は正常で、ヒス束より上は正常ですが、急にQRSが欠落するので、ヒス束以下が障害されていると考えられます。
完全房室ブロック
Ⅲ度の完全房室ブロックは、P波とQRS波が独立しており、伝導系の統率が全く取れていません。ペースメーカーの適応となります。
洞不全症候群
洞結節の異常で、全て徐脈を呈します。Ⅰ度は徐脈で、Ⅱ度は洞停止や洞房ブロックなので、P波も残らず脱落します。Ⅲ度は、頻脈も呈します。
心室性不整脈
死に直結する不整脈が多いので気を付けましょう。
心室性期外収縮(PVC)
PVCは心室の興奮が速くなって出現したもので、QRS幅が広く一目で判別し易いです。症状が出る場合や、心筋梗塞後などで頻発する場合は、薬剤などを考慮するので注意しましょう。
心室頻拍(VT)
PVCが3連続以上生じたものです。ある程度の拍出は保てていますが、更に重篤な無脈性心室頻拍(pulselessVT)や心室細動(VF)に移行する可能性が高く、早急に対応します。
心停止
無脈性心室頻拍、心室細動、無脈性電気活動(PEA)、心静止(Asystole)の4種類は、心停止の扱いとなり、直ちに心肺蘇生を行います。
PEAは、電気活動のみで、脈が無い状態です。極端な話、洞調律に見えても、脈が無ければPEAとなります。脈の触知や、動脈波形などを確認してみましょう。
症状
動悸、脈拍欠損などや、脳血流が低下した場合は眩暈、失神発作を呈します。不整脈による失神を、アダムスストークス症候群と言います。
心電図検査
一般的な病棟では、Ⅰ、Ⅱ、Ⅲ、の誘導のうち、Ⅱ誘導を用いることが多いです。図の通り、刺激伝導系を走る向きになっており、P波などが一般的な波形に近くなります。
陰極(マイナス)を起点に、陽極(プラス)に矢印は伸び、興奮がプラスに近付くと波形は上に向きます。残り1つはアースになります。
アースは手で触れたり、体動などによる影響を受けません。また、矢印の先端から心臓を見ているイメージになります。

一方12誘導心電図は、その名の通り12種類の誘導法を用います。胸部誘導は、電極を貼った位置から心臓を見ているので比較的イメージし易いと思います。
方法は四肢に四つ、胸部に六つの電極を取り付けます。覚え方は、四肢は通常の三点誘導と同じ配置で、右足は黒のアースになり、胸部は図の順番で貼っていきます。
覚え方は「あきみちゃんこくし」、「せきぐちくん」などが有名です。不整脈が突発的で、日常の心電図を記録する場合などは、24時間装着するホルター心電図を用います。
電気生理学検査
電気生理学検査は、血管にカテーテルを挿入し、不整脈を誘発するなどで心臓の電気信号を捉えていきます。その延長で、アブレーション(焼却術)を行って異常刺激を起こす部分を、高周波電流により焼き切っていきます。
頻脈
迷走神経刺激法
- バルサルバ法では、以前の動画で解説した機序と同じ様に、息止めをして胸腔内圧を上昇させて刺激します。
- 頸動脈圧迫では、迷走神経の通り道である部位を圧迫することで、神経を刺激します。この方法は頸動脈に異常を持っている場合や、血栓が存在することで脳梗塞に至る危険性があります。
- 冷水によっても刺激されます。
薬物療法では、抗不整脈薬による治療や抗凝固薬による血栓予防などを行います。薬物に反応しなかったり、血行動態が悪く緊急を要す場合などは、除細動を行います。細かな動きを取り除く役割ですので、心臓が完全に止まっている心静止、電気信号だけのPEAには使いません。
R波を検知して、同期する方法を、カルディオバージョン、非同期で行う方法を、カウンターショックと言います。まずは、先程解説した致死性不整脈2種類(pulselessVT・VF)はカウンターショック、それ以外で例えば上室性不整脈(AF)などはカルディオバージョンと覚えておけば十分だと思います。
徐脈
経皮的ペーシングは、一部の除細動器に備わっている機能で、体表にパッドを貼って心臓に刺激を送ります。その間に、体外式ペースメーカーを留置したり、薬剤投与などを行います。恒久的ペースメーカーは、皮下に埋め込んで心臓に刺激を送ります。
薬物療法では、副交感神経を抑制するアトロピン、β1受容体を刺激する薬剤などを用います。
今回は「不整脈」について解説しました。
まとめ
- まずは波形の意味と間隔をざっくり覚える
- 心房性不整脈、房室ブロック、心室性不整脈で分けて考える
- 心停止4種類を覚える
- 心電図の誘導と心臓を見ている向きを覚える
- 対症療法について理解する
- 除細動は心臓の震えを取り除くもの
- 迷走神経、β受容体、抗不整脈薬(チャネル)などと合わせて関連付ける
- ペースメーカーの適応を覚える
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