
・行動経済学って何?
・どうして看護師も知った方が良いの?
今回は、こんな声に応えていきます。
「お金」以外に、「人間関係」でも使えるので知って損は無いです。多くは「現在」を見失って、「未来」の計算が行えなくなることで起こります。
本記事の内容について
・行動経済学について
・代表的な現象を例と一緒に紹介します
・ナッジと業務改善について
<Contents>
行動経済学とは
経済学とは違って、人間の心理を紐解いて非合理的な決断をする原因を研究していく学問です。

フレーミング効果
同じ中身でも表現方法で印象が異なってしまうことです。
よく用いられている方法としては「g ⇒ mg」などの単位を換算して大きい値で表示する方法です。
あとは保険やリボルビング払いなども、この手を用いてます。一括で5万円を払うより月々4500円、更に言うなら毎日170円の方が安く感じてしまいます。蓋を開けてみれば、月払いは5万4千円、日払いは6万2千円程度と、より高く支払うことになります。
「現在」に惑わされずに、きちんと「未来」を計算しましょう。
個人的にフレーミング効果は、「よく分からないこと」、「不慣れなこと」などには効果抜群だと思います。例えば、1時間を60分と言っても大して印象に残らないのは慣れが大きいと思います。24時間を1440分と言うのは効果が出そうですね。


リボルビングとは

これを見て年率に何も感じなかった人は必読です。
デメリット
15%の利子と言うと、リスク管理された投資信託の一般的な年率5%に対して3倍です。圧倒的な最大最凶のデメリットです。
10万円だと、単純計算でも年に15,000円の利子が発生してしまうのです。これは支払い方法などによりますが、増額分に更に%が掛かると、もっと増えていきます。
時間です。利息が付きます♪

年利15%で投資信託が回せたら?
仮に積立NISAを年間40万円(月約3万3,000円)で年率15%とし、2年間運用すると12万円の利益になります。また、最初から80万円を15%で放置するだけで、2年後は利息が約26万円、5年後は約81万円、30年後には約5,200万円と雪だるま式に増えていきます。
ちなみに年率15%で月約3万3,000円の投資をしたまま30年経つと・・・元本1,200万円(年間40万円×30年)で、驚きの計2億3千万円です。一般的な年率5%だと大体2,750万円なので、3倍(10%)の違いの凄さが分かりますね。
もし2億3,000万円を現実的な年率5%、30年で達成するには毎月27万6,000円の積み立てが必要です。
複利の凄さ、逆複利の怖さが分かりましたね!実際は支払いを放置することは無いと思いますが。
メリット
どうしても必要な物を買う時以外にメリットは無いです。
よく見掛ける謳い文句は次の通りです。
繰上返済
多少知識を持っていれば幾分早めに返済するでしょうけど、リボルビングを使う人が繰上返済を意識するなら、そもそも使わないんじゃ。
家計管理
一定の金額で管理できるからコントロールし易い?手数料で家計を圧迫します!
金欠可能
金欠なら尚更使わない方が良いでしょう。現在の欲望に負けない様にしましょう!
リボルビング利用率
*複数回答です。(4,000人中2,235人回答)
平成23年度のデータですが、半数近くの人は利用していないようです。
1万円未満:3% ~5万円:15%
~10万円:16% 10万円以上:17%
常時:4% 負担無し:18%
参考リンク:日本銀行

ポイント
無駄遣いの防止にはキャッシュ(現金)が良いです。クレジットカードより心理的に痛みを感じます。私はPCなどで投資や投機をするのですが、どうも現実味が無いので凄く分かります。
クレジットカードは嗜好品を買う量が増えたり、通常より多く出費することが分かっているので、健康にも一役買いそうです。実際イギリスでは、利用拡大に伴って債務者が3倍になったそうです。現金で支払うのを想像するのも良いようです。以上を実践しつつ、浪費を抑えて的確にクレジットカードでポイント戦略できれば最高ですね!
感応度逓減性
感応度逓減性と読みます。 対象に設定された価格が大きいほど、同じ金額でも感じ方が変わってしまうこと。 例えば、100円が半額の50円になった場合より、10,000円が9,950円になってた場合の方が印象が低くなります。逆に100円が150円になった時より、10,000円が10,050円になった時の方が印象は下がります。 これを利用して、高額な商品にオプションを付けるのが売り手の常套手段です。結婚式、車、家電、ブランド品などを購入する際は特に注意しましょう。
例
400万円の車を購入するとします。


普段なら5万円は一考すると思いますが、400万円に対して感覚が麻痺しています。
実は「限定」と言う制限を設けることでも誘い込んでいます。気付けた方は勘が鋭いですね!
この様に、複数の手段を用いていることも多いです。
無料の罠
タダより高いモノは無い!
分かってても、よく引っ掛かってしまう罠ですね。
・3点購入の方には、もう1点!
・2,000円以上で飲み放題をサービス!
・無料相談!
などです。元の値段に含まれていたりと、無料でも利益が出る仕組みになっています。善意か罠かの判断が難しいので、本当に必要かどうかで利用しましょう。
おとり効果
2つの選択肢に中間程度の3番目の選択肢を入れることで消費者の購買を促します。
食べ飲み放題3,000円
飲み放題1,500円
そこに食べ放題のみのメニューを2,800円で入れると?
食べ飲み放題3,000円
食べ放題2,800円
飲み放題1,500円
前者が一気に魅力的になりませんか?
極端回避性
人は極端な選択を嫌います。松竹梅の原理とも言います。
Aメニュー:3,000円 Bメニュー:2,000円 Cメニュー:1,000円
食事のメニューなどで無意識に中間を選んだ経験はありませんか?他にも、自分の意見を言わずに中立の立場を取ったりですね。おとり効果とも合わさったり、迷った際には陥り易いです。
アンカリング効果
1つの「基準」によって、同じ結果だった場合でも物事の解釈が変わって判断されてしまうこと。
アンカーとは日本語で「錨(イカリ)」の意味で、海に沈めて船を固定するように、1つの基準を設けることです。
以下の事例を見てみましょう。
例

前日確定料金が5,000円だと言われると


前日確定料金が5,000円だと言われると

結果は同じなのに印象が変わりますね。人は1つの「基準」に引っ張られてしまうことが多いです。
日常で打算的になり過ぎるのもどうかと思いますが、もし相手と交渉する場合は先に「錨(アンカー)」を降ろしましょう。こちらの思惑より多少有利に言うのがコツです。但し、常識から外れていたり、明らかに嘘だと分かる基準は逆効果ですので気を付けましょう。
例えば成人領域で働き慣れている人が、小児の心拍数を見ると「ギョッ」とするのもアンカリング効果ですね(逆もまた然り)。同じ領域でも疾患によってバイタルサインは人それぞれですので、思い込みには注意して個々の「基準」を持ちましょう。
プロスペクト理論
人は報酬は確実性、損失はギャンブル性を好みます。
行動経済学者としては超有名なダニエル・カーネマンとエイモス・トヴェルスキーによって提唱された理論です。この理論は様々な行動経済学の基盤にもなっています。
次の例を、純粋な視点でどちらが良いか選んでみてください。


予備知識など無ければ、純粋にBを選んだ人が多いと思います。
人間は利益に対しては確実に得をする方を選びます。
では、自分が借金を持っていると仮定して次の例も選んでみてください。


さて、どちらを選びましたか?
多くの人はAを選ぶと思います。
損失は利益よりも2倍重視し、無くしたいと思ってしまいます。
損失が出ていても更に資金を突っ込むギャンブルでよく見られます。
サンクコスト効果(コンコルド効果)

①帰る ②最後まで参加する

①帰る ②最後まで参加する
どうでしたか?
無駄と分かっているのに勿体無いと思ってしまう人は、Aを②と答えます。何も得をしないセミナーなのに、代金を払ったことで「最後まで受けないと無駄になってしまう」と思うのです。
Bでは①と答えると思います。「無料」でコストが掛かっていないので合理的な判断ができるのです。


「時間・労力・金銭など、既に使用してしまった取り返せないコスト」を取り戻そうとする心理状態、これをサンクコスト効果(≒コンコルド効果)と言います。この影響下に陥ると、人間は合理的な判断ができなくなります。
5年交際して別れたのには、それなりの理由があるはずです。職場が心身に悪影響を及ぼすなら変えるべきです。ギャンブルも統計学やその道に精通していないと、成功する根拠は無いです。これらの合理的判断を「費やしたコスト」が邪魔します。コストは大きければ大きい程、効いてきます。
かと言って、何でも諦める癖も良くないですよね。努力しなければ実を結ばないことは多いですし、努力は成功するには必須の能力です。以下に対処法を記載します。
過去に戻る
仮にコストを掛けていなかったとして、再度コストを掛けるか?を考えてください。
人は「授かり効果」と言って、自分の所有しているモノなどを過大評価してしまいます。CとDの事例で見てみましょう。
・5年付き合った恋人と、過去に戻ったらまた付き合いますか?
・10年前に戻ったら、また同じ職場に就職しますか?
・同じパチンコ台でまた打ちますか?
・1度も大当たりしていない宝くじを、5年前から買い続けますか?
答えがNOの場合はサンクコスト効果に陥ってるかもしれません。
もしYESと答える場合、それは真面目なり、生粋の趣味なり、何かしら「覚悟」を持っているので、「諦めない努力」をすれば良いと思いますよ^^
ちなみに「授かり効果」は断捨離などでも使えるので、部屋が片付かない人は是非使ってください。
他者評価
1度第三者の意見を聴いてみるのも良いと思います。自分で陥っているか判断が付かないことも多いです。また、自分を他人に置き換えて考えてみるのも良いかもしれません。
トレードオフ
トレードオフとは、相容れない関係のことです。何かを手に入れれば、何かを失う。
事例で言うと、「セミナーに参加している時間」と、「帰ることで何かになり得た時間」が相容れることは無いのです。ここで言う「何かになり得た時間」を逃してしまう事をオポチュニティコスト(機会費用)と言います。
もしセミナーが無料だったら、早々と帰宅して他の学びや趣味などに費やせたでしょう。 人は比較的サンクコスト(過去の執着)を意識してしまうと言われています。
オポチュニティコスト(未来の可能性)を意識するようにしましょう。
例えば、事例Cのサンクコストは時間(5年、10年)、オポチュニティコストは元恋人や現職場に囚われて失った全ての機会(未来の恋人、娯楽、交友関係、スキル等々)になります。
ナッジとは
ナッジ「Nudge」とは、「そっと突く」などの意味を持ちます。何かしらの切っ掛けで、人に行動を起こさせます。

これも切っ掛けになっていますが、その場凌ぎです。残念ながらナッジの定義にはなりません。ナッジは「強制」より「自由」を重視しています。
防犯カメラ作動中
仮に嘘でも、この表示が出ていると防犯効果になりそうですよね。
オススメ!
レストランや商品などで色鮮やかにマークされていると、選んじゃいませんか?
小便
男性なら分かると思います。便器にマークが書かれていると狙いたくなりませんか?これにより汚染を防ぎます。
どう臨床で活かす?
そもそも法律違反なことには使わないようにしましょう(残業代を払わないのに早出・居残りを推進するとか)。
各職場、組織によって問題は違ってくるでしょう。強制などでは一時凌ぎにはなりますが、継続して効果を発揮しないんですよね。簡単なのは統計で示された情報をメリットやデメリットで注意喚起する方法です。
「その行為、患者の死亡率を〇%増やします!」
「これは、〇割の患者が喜びます。」

まとめ
今回は行動経済学を解説しました。
注意ポイント
・人の脳は楽をしたがり、現状を好みます。
・現在に囚われると、未来を失います。
・人は得することよりも損することを嫌います。
・1つの基準や数字の大小に影響されます。
・選択の自由を与えないと、多くの反発を招きます。
この様な傾向を持っているので、「お金」、「人間関係」、「時間」などを守るには、きちんと数字や必要性を分析して行動に移すことが重要になってきます。
