
今回は、こんな声に応えていきます。
この記事は看護学生・看護師は勿論、その他の医療学生・関係者にも通ずる基礎内容です。専門書やガイドラインなどでデータや事実を確認してから執筆しています。学科試験・国家試験・予習復習などに役立ててください! 国家試験範囲の解説一覧は領域別にHOMEに掲載しています。Kindle電子書籍を活用して無料・低価格で「電子ノート」を作りたい場合は、以下の記事を参考にしてくださいね!
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【医療学生】iPad・アプリなどを活かした図解ノートによる勉強方法について<看護>
当記事で分かること
- 食物の各器官の停滞時間とは
- 消化管に流れる水分量について
- 便秘と下痢について
<Contents>
消化管の運動について
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【消化管】消化器官との違いとは?順番・構造・長さ・働きについて<看護・医療国家試験>
今回は食道以降の動きを見ていきます。消化管の機能は自律神経の交感神経で抑制され、副交感神経で亢進します。消化管の動きは3種類です。
- 蠕動運動:食道・胃・小腸・大腸・直腸 >主に食物を運ぶ
- 分節運動:小腸など >主に食物を混ぜる
- 振子運動:小腸など >主に食物を混ぜる
蠕動運動
蠕動運動は、消化管が収縮と弛緩を繰り返して食物を運ぶ動きです。ウニウニ動くので、芋虫を想像すると分かり易いです。
分節運動
その名の通り、節を分けた動きをします。内容物をかき混ぜる運動です。
振子運動
外縦筋により蛇腹の様に収縮と弛緩を行って、内容物をかき混ぜます。蛇腹をイメージすると分かり易いと思います。
食物が消化管に残留する時間について
咀嚼して嚥下し、食道を通過するまでは僅かな時間で終わります。個人差などは大きいですが、胃からの停滞時間は次の通りです。
胃
粥状にして幽門より十二指腸に送られます。食事に影響され、大体3-6時間程度です。胃では蛋白質を分解するので、油分が多いと時間が掛かります。また、アルコールは胃で吸収されます。
人によっては、飲酒直後に顔が赤くなりますよね!小腸
十二指腸に入って大腸に移行するまでに10時間弱掛けて、多くの水分や栄養素が吸収されます。脂質を最初に分解する場所で、蛋白質や糖質も分解していきます。膵液や胆汁などがホルモンなどで分泌されます。
大腸
大腸で30時間程度停滞し、残りの水分を吸収して便塊を形成していきます。直腸でも30時間程度停滞しますが、吸収機能は無いです。
排便

ビリルビンを分解することで茶色になります。黒い場合は上部消化管出血、赤い場合は下部消化管出血、白い場合は胆道閉塞などが考えられます。
また、食事を摂取せずとも、以前に摂取した食物の残渣物や消化管の上皮などが脱落することで、便として排泄されます。
便色
- 黒色:鉄剤の影響や出血によってヘモグロビンが胃酸に酸化されることによります。食事(イカ墨など)の影響でも黒くなります。
- 赤色:多量の出血や胃酸の無い下部消化管出血などで赤くなります。
- 脂肪便:脂肪の消化不良などによって、黄色の便になります。
- 灰白色便:バリウム検査やビリルビンの排泄障害などによって起こります。
食事の後にトイレに行きたくなりませんか?摂食により生体が大腸を動かして、直腸に便を運びます。これを胃結腸反射と言います。
直腸内圧
直腸内圧が上がることで骨盤神経から仙髄(排便中枢)を介して脳に伝わり、不随意筋(平滑筋)の内肛門括約筋が弛緩して便意を感じます。
コントロール
そのままだと漏れてしまうので、仙髄(排便中枢)から陰部神経を介して随意筋(横紋筋)の外肛門括約筋を収縮させることで我慢できます。
排便
腹圧により排便が起きます。仰臥位ではより息む力を必要とします。排便の際に排尿も同時に起きるのは、陰部神経で両者が連動している為です。
注意ポイント
排便の際に息むことを怒責と言います。怒責を行うと血圧が上昇し、循環系に影響を及ぼします。心血管系の疾患を患っている場合などは、特に注意して排便管理をしましょう。

消化管に関わる水分と便性について
体格や活動レベルによって変化しますが、大体1日の平均水分摂取量は2~2.5L程度です。そして消化管の消化液量は7~8Lなので、1日に10L弱の水分が腸管に入ります。
内訳
・食事:1L程度
・体内の代謝で生成される水分:300ml程度
・飲水:1~1.5L前後
ブリストルスケール
国家試験範囲外ですが、臨床でも使う排便スケールは以下の通りです。
便秘・下痢とは
便秘
便秘は十分量に、また快適に排出できない状態とされています。主に以下の2種類に大別されます。
機能性便秘
- 直腸性:習慣性便秘とも言います。我慢などを習慣化することで陥ります。
- 弛緩性:老化や臥床生活などで大腸の蠕動が弱まった状態です。女性も陥り易く、運動や食物繊維を摂取します。麻薬の投与でもなります。
- 痙攣性:ストレスや副交感神経の緊張で過収縮して動かせない状態です。過敏性腸症候群でもなります。薬剤などで対応します。
器質性便秘
腸の形態により陥ります。癌や狭窄など、疾患が関係しています。
下痢
下痢では排便回数が増えて疲労を感じ、栄養が充足されずに倦怠感が生じます。水分摂取も不十分になると、大量に体外に消化液が排出されることで、特に子どもや高齢者では水・電解質のバランスが崩れます。
下剤
- 刺激性:センノサイド・ピコスルファートナトリウムなど
- 浸透圧性:酸化マグネシウムなど
- 直腸刺激性:グリセリン浣腸・炭酸水素ナトリウムなど
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腹痛の原因と対応を体性・内臓・関連痛などで解説します<看護師国家試験>
今回は食物などの「移送・停滞時間」と「便」について解説しました。
まとめ
- 蠕動運動は消化管全てで起き、直腸まで移送されます
- 分節運動と振子運動は主に小腸(一部大腸)で行われ、撹拌します
- 個体差が大きいですが、食物は大腸まで半日程度、その後2日前後要します
- 便はビリルビンにより茶色くなり、他の色は異常の可能性が考えられます
- 胃結腸反射>直腸内圧上昇>内外肛門括約筋>排便
- 怒責は血圧が上がるので疾患によっては排便コントロールが重要です
- 便秘の原因:習慣・運動・食物繊維不足・ストレス・麻薬・疾患など
- 下痢の原因:水分過剰・吸収能低下・蠕動亢進・薬剤性など
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