
今回は、こんな声に応えていきます。
当記事で分かること
- 糖について
- 糖尿病の概要について
- 治療や看護について
<Contents>
糖尿病
現代病、生活習慣病などと称され、予備軍も含めると2000万人程度存在すると推計されています。国民の約6人に1人ですね!万病の基にもなります。実習や臨床でもよく見掛けるので、基礎を押さえましょう。
糖尿病は1型糖尿病、2型糖尿病、妊娠糖尿病などに分かれます。失明、足壊疽、透析、易感染、血管病変などの合併症が懸念されるので、理解して防いでいきたいところです。
DM:Diabetes(糖尿病) Mellitus(ラテン語:蜂蜜の甘さ)、単にdiabetesでも伝わります。程度や合併症の違いはあれど、投薬にまで進行すると年に10万円前後の医療費が掛かるとも報告されています。
糖とは
御存じの通り、糖は炭水化物で、生体にとってエネルギーとなります。血中の糖分はインスリンによって細胞に取り込まれたり、脂肪に変換されて血糖値が下がります。
ある程度は糖分を摂取しなくても、グルカゴンなどのホルモンにより肝臓のグリコーゲンが分解されてブドウ糖となります。糖には様々な種類(単糖類、二糖類、多糖類など)があります。
「糖類」が二糖類以下、「糖質」は多糖類以下、「炭水化物」は食物繊維以下に対して使うのが正しい使い方です。
血中の糖はグルコース=ブドウ糖(単糖類)を測定しています。分子量が小さいほど、糖の吸収は早く、血糖値を早く上げます。
低血糖の際にブドウ糖やジュースを摂取するのは、こういった理由です。
単糖類や二糖類は甘味が強いです。但しでんぷんの様に、糖質が必ずしも甘くは無いです。分子量は単糖類から段階的に大きくなります。多糖類にはでんぷんなどが含まれ、更に分子量が大きく消化が難しいのは食物繊維です。食物繊維を多く摂取する様に推奨される理由は、吸収が緩やかだからです。

糖新生・耐糖能
糖新生とはその名の通り、新しく糖を生み出すことです。血糖値(グルコース)が下がった時に肝臓に蓄えられたグリコーゲンを分解したり、筋肉・脂肪などを肝臓で代謝してグルコースにします。
脳では非常時にケトン体を用いますが、これが進むとケトアシドーシスと言う血液が酸性の状態になります。
耐糖能は食後に血糖値を戻す能力で、普段の血糖値では計り知れないので境界型糖尿病(隠れ糖尿病)に関わります。
検査はOGTTと呼ばれるブドウ糖を摂取して血糖値を定期的に測ります。2時間後の数値が140-199mg/dLだと境界型糖尿病となります。
GI値とは
最近はGI値と言う概念が広まってきていますね。グライセミック・インデックス(Glycemic【血糖】 Index【指数】)の略で、値が低いほど血糖値の上りが緩やかになります。
GI>70を高GI食品、56<GI≦69を中GI食品 GI≦55を低GI食品と定義しています。根菜や大豆、サツマイモなどは比較的低いです。
数値が高いと血糖が急激に上昇し易く、インスリンが多量に分泌されることで血糖値が急激に下がったり、過剰に脂肪となったりします。
血糖値が急激に下がると、空腹感が増して過食にも繋がります。これを長期間続けているとインスリンの量も足りなくなって糖尿病に近付いていきます。GI値が低い食物を食べることで、血糖の上昇やインスリンの分泌を緩やかにして満腹感を得られます。

欧米人
肥満が多いと思いませんか?欧米人はインスリンを分泌する機能が日本人より優れており、過食をしても脂肪(肥満)となり、インスリンが保てている間は糖尿病になりません。
反面、日本人は肥満になる前にインスリンが不足して糖尿病になってしまうことも多いのです。欧米の食生活を行っていると、この危険性が高まります。
ちなみにGI(グルコース・インスリン)療法とは別です。こちらはブドウ糖の吸収時にカリウムが取り込まれるのを利用した高カリウム血症の治療法です。
血糖調節ホルモン
血糖を下げるホルモンは膵臓のβ細胞より分泌されるインスリンのみです。筋肉、肝臓、脂肪に取り込みます。
一方で血糖を上げるホルモンは、膵臓のα細胞から分泌されるグルカゴン、副腎髄質より分泌されるカテコラミン、副腎皮質より分泌されるコルチゾールなどが存在します。
膵臓のδ細胞から分泌されるソマトスタチンは、インスリン及びグルカゴン、消化管ホルモンのガストリンやセクレチンなどの分泌抑制を担います。
なぜ糖尿病になるのか?
「量」が減少したり、無くなってしまうことをインスリン分泌障害と言います。頻回な過食や早食いにより、血糖の急上昇とインスリンの過剰分泌を繰り返したり、抵抗性が強くて通常より多くインスリンが必要な状況が続くと、膵臓は疲弊して障害が起きます。
一方、「効能」が減少したり、無くなってしまうことをインスリン抵抗性と言います。量が確保されていても効き難い状態になっています。運動不足などで抵抗性が強くなります。
糖尿病の分類について
ここではⅠ型糖尿病とⅡ型糖尿病について記載していきます。
【表】

Ⅰ型糖尿病
割合で言うと5~10%程度を占めると報告されています。若年で発症するイメージですが、青年期以降でも発症します。
遺伝や自己免疫などにより、β細胞が破壊されてしまうことでインスリンの量が不足します。インスリン分泌障害が主なので、インスリン投与がメインの治療になります。
Ⅱ型糖尿病
多くは2型糖尿病で、9割程度を占めます。インスリンの作用により脂肪が蓄積していることが多く、肥満体型がよく見られます。
インスリン分泌障害とインスリン抵抗性が混在しています。最初の頃は食事・運動療法がメインの治療になり、コントロール不良な際は投薬を行います。
糖尿病の検査とは
血糖値・OGTT
随時血糖値200mg/dL、空腹時血糖値126mg/dL以上などが1つの基準になります。この範囲で無くとも境界型に入る可能性もあります。
また、普段の血糖値が正常でも、前述した通り食後の血糖値を戻す能力(耐糖能と言います)が低い場合は隠れ糖尿病の可能性もあります。これはブドウ糖負荷試験(OGTT)で確認します。
血糖自己測定(SMBG)
Self monitoring of blood glucose、自分で行う血糖測定ですね。
CPR(C-ペプチド反応)
インスリンの前駆体がインスリンになる際に、インスリンと同じ量のC-ペプチドが生成されます。これは尿中に排泄されるので、インスリン分泌量を測定したい際に活用します。インスリンはリアルタイムで消費されてしまって、的確に測れないのです。
HbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)
長期間(2ヶ月程度)の血糖コントロールの平均推移を反映します。体のヘモグロビン(Hb)の全体の何%に糖が結合しているかを示します。
年齢にもよりますが5.0%前後が正常値になり、6.0%を越えてくると高い水準になってきます。HbA1c≧6.5%は危険です。
糖尿病の合併症とは
低血糖
合併症の1つですが、分けました。
高血糖よりも危険です。主に薬剤性、糖摂取不足(食事)、運動などによって起こります。多くは60mg/dLを切ってくると症状が出始めます。ブドウ糖は脳の主な栄養になるので、不足すると意識障害や頭痛、痙攣などの神経症状を呈すことが多いです。
医療機関ではブドウ糖の点滴を打てますが、日常では難しいので吸収の早い単糖類、無ければ二糖類で対応します。【糖類とは】
三大合併症

高血糖による3代合併症(細小血管障害)は以下の通りです。多くは血糖による浸透圧異常(多尿)、血管障害、免疫機能低下、インスリン反応性などが原因となります。
- 網膜症:視力低下、失明など
- 腎症:腎不全、透析など
- 神経障害:感覚異常、自律神経障害など
その他
易感染、心臓や脳の大血管病変、糖尿病性ケトアシドーシス(DKA:Diabetic KetoAcisosis)、高血糖性高浸透圧昏睡(HHS:Hyperglycemic Hyperosmolar State)など。
指導について
食事
出典:農林水産省
前述した通り、バランスよく摂取する必要があります。極端なダイエット、偏食などは推奨されません。画像は健康な人のガイドです。
運動
有酸素運動では血糖の消費を増やしたり、インスリン抵抗性を改善します。50%程度の運動強度で行うことを勧められていますが、本人の健康状態などにもよりますので担当医や運動指導士などに聴きましょう。ちなみに運動強度は心拍数で計算する方法が1つです。
- 最大心拍数(簡易式)= 220 ー 年齢
正確に測る場合はApplewatchなどが必要になりそうですけどね。
血糖値・注射
血糖自己測定(SMBG)・自己注射:血糖やインスリンなどの自己管理は大切です。
一般的に皮下注射で投与します。皮膚を軽くつまみ注射します。部位は運動に影響し難い臍周囲に行うことが多いです。
上腕外側、大腿外側などでも可能ですが、運動などによって吸収が早まると血糖が急に下がります。揉むのも良くないです。
インスリンの種類について
インスリンの種類
Human+Insulin、Novo Nordisk【会社名】+Insulinに由来する商品が出ています。「R」はRapid、Regular、「N」はNeutral Protamine Hagedornから由来しています。
超即効型
15分前後で効き始める。食欲不振などの場合は摂取後に投与可能だが、4時間前後持続するので遅くなるほど時間経過による低血糖の危険性が出てくる。不足したインスリンを追加で打つので効き方は「山」(短時間)のイメージ。
中間型
1時間前後で効き始め、1日程度の持続時間を持つ。基礎的なインスリン分泌を補うので効き方は「丘」(長時間)のイメージ。
混合型
一般的に数字が記載されている。その数字が「R」の割合になり、残りが「N」の割合になる。「山」と「丘」両方の特徴を持つ。
