
今回は、こんな声に応えていきます。
癌には疾患毎にリボンの色が決まっていて、食道癌は「ペリウィンクル」です。
この記事は看護学生・看護師は勿論、その他の医療学生・関係者にも通ずる基礎内容です。専門書やガイドラインなどでデータや事実を確認してから執筆しています。学科試験・国家試験・予習復習などに役立ててください! 国家試験範囲の解説一覧は領域別にHOMEに掲載しています。Kindle電子書籍を活用して無料・低価格で「電子ノート」を作りたい場合は、以下の記事を参考にしてくださいね!
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【医療学生】iPad・アプリなどを活かした図解ノートによる勉強方法について<看護>
当記事で分かること
- 食道癌とは
- 好発部位やステージ分類など
- 症状や治療などについて
- 術後管理について
<Contents>
食道癌とは
約7割が60歳以上で男性に多く、男女比は約6:1です。90%が扁平上皮癌です。

扁平上皮に関しては「コチラ」を参考にしてください!
注意ポイント
食道は進行が早く、漿膜を欠く部位で、更にリンパも豊富なので周囲(肺・肝臓など)に転移し易く、消化器系の癌の中では予後不良です。
好発部位
- 胸部中部食道(50%程度)Mt:Middle thoracic esophagus
- 胸部下部食道(25%程度)Lt:Lower thoracic esophagus
- 胸部上部(Ut:Upper thoracic esophagus)>腹部食道(Ae:Abdominal esophagus)>頸部食道(Ce:Cervical esophagus)
危険因子
- 喫煙
- 飲酒
- その他:熱い食事・野菜摂取不足など
疾患
- アカラシア
- バレット上皮(欧米>日本)
バレット上皮とは
逆流性食道炎などで粘膜が傷害を受けた際、本来は重層扁平上皮だったところが円柱上皮(酸耐性)になって再生してしまったところです。この上皮を持つ食道をバレット(Barrett)食道と言って、食道腺癌が生じ易くなります。

「腺」とは分泌を行う組織・細胞のことです。例えば、胃は胃酸を分泌しますね!
検査
検査
- 内視鏡検査:カメラで状態を観察します。
- ヨード(ルゴール)染色:正常では細胞のグリコーゲンに反応して茶褐色に染色されますが、癌細胞は染色されないです。
- 生検検査:組織の病理検査を行います。
- 食道造影:癌による狭窄所見が見られます。
- 腫瘍マーカー:SCC(扁平上皮癌関連抗原)・CEA(癌胎児性抗原)
ポイント
SCC( squamous cell carcinoma)は扁平上皮癌の意味で、上皮細胞の分布を覚えると概要が掴めます。
参考
病理検査・イメージ
TNM分類とは
- T(Tumor):原発腫瘍の大きさなど
- N(Nodes):リンパ節転移について
- M(Metastasis):遠隔転移について
食道癌深達度分類
- 粘膜上皮(EP)
- 粘膜固有層(LPM)
- 粘膜筋板(MM)
- 粘膜下層(SM)
- 固有筋層(MP)
- 外膜(Ad)
下に進むほど深い層まで進行しています。リンパ節転移の可能性も高く、深達度などに合わせて治療方針を検討します。
症状
症状
- 無症状
- 摂食時の「しみる」感覚
- 嚥下障害・体重減少
- 胸痛・嗄声(反回神経麻痺)
合併症
- 食道気管(支)瘻:食道と気管が交通する
- 大動脈穿孔
治療
治療・手術
以下の治療方針を組み合わせることを集学的治療と言います。一般的な周術期看護については「コチラ」を参考にどうぞ!
- 放射線治療:扁平上皮は放射線感受性が高いです。
- 化学療法:抗癌剤などで加療します。放射線の当たらない部位にも効果が期待できます。
- 化学放射線療法:食道癌では上記2つを併用すると有用と報告されています。
- ステント挿入(瘻孔形成時)
- 内視鏡的治療
- 外科的治療

内視鏡的治療
- 内視鏡的粘膜切除術(EMR:Endoscopic Mucosal Resection):粘膜層レベルで広範囲に輪で締める様に切除を行います。
- 内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD:Endoscopic Submucosal Dissection):専用の器具で切り取っていきます。EMRより広範囲に行えます。
外科的治療
食道切除術+食道再建術+リンパ節郭清:癌に侵された食道の切除とリンパ節を取り除き、食道を再度人工的に作ります。
- 胸骨前
- 胸腔内
- 胸骨後
術後
冒頭で解説した通り、60歳以上の高齢者が多く、様々な機能が衰えている可能性が考えられます。
ポイント
・全身管理:感染や呼吸不全などに注意してバイタルサインを見ていきます。また、同時に問診や視診などでフィジカルアセスメントもしていきましょう。
・嚥下機能:肺炎にも繋がり、食道再建などに影響されます。経口摂取開始後は形態や摂取量などに注意します。中心静脈栄養なども考慮します。
・呼吸機能:臥床していると痰や重力などで肺胞が潰れる無気肺などになります。喫煙していると更に危険性が高まるので、術前から呼吸トレーニングを行ったり、術後は早期離床も含めて取り組みます。
・消化機能:食道再建で胃を用いていると、ダンピング症候群などに注意します。また、食後は挙上して嘔吐などを防ぎます。
・ドレーン管理:胸腔ドレーンや創部ドレーンなどを管理していきます。
今回は「食道癌」について解説しました。
まとめ
- 6:1で男性に多く、60歳以上が好発年齢です
- 90%以上が扁平上皮癌で進行速度は早く、初期症状は「しみる」感覚です
- 好発部位はMt(中部食道)です
- 危険因子は飲酒と煙草で、その他野菜摂取不足や熱い飲食などです
- 病態や疾患の危険因子ではアカラシアやバレット上皮になります
- 検査では内視鏡でヨード染色により、染色されないです
- 治療では状況に合わせた集学的治療を行います
- 食道再建では生理的位置となる胸腔内が現在の主流です
- 術後はバイタルサインなどを確認しつつ、食事、呼吸、ドレーンなどを見ていきましょう
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