
今回は、こんな声に応えていきます。最初はどっちがどっちだっけ?ってなりますが、次第に分かってきます!
当記事で分かること
- 急性呼吸不全とは
- Ⅰ型・Ⅱ型の違いって?
- 酸素療法の適応について
- ガス交換・拡散障害の種類とは
<Contents>
急性呼吸不全
酸素療法を行う場合、その目的は低酸素症及び組織の酸素化を改善することになります。
先回の記事でも書きましたが、ヘモグロビンや心拍出量も重要です。胸部レントゲン画像の確認もしましょう。酸素療法が不安な人は、先に下記記事を読むのをオススメします。
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【看護】酸素療法の種類って?大気・適応・注意点などをガイドラインに則って解説します
呼吸とは
呼吸には、通常の呼吸ともう1つ種類が存在します。
外呼吸(通常の呼吸)
肺胞でヘモグロビンにO2を渡し、血液のCO2を吐き出すこと。1回換気量は500mlですが、ガス交換に関係するのは350mlです。残りの150mlは口腔・気管などの「死腔」に残ります。気管挿管などのチューブは「死腔」を増やすことになります。
内呼吸(細胞の呼吸)
ヘモグロビンが細胞にO2を渡し、細胞が血液にCO2を渡すこと。
どちらも拡散により行われます。

酸素療法の適応とは
ヘモグロビン酸素解離曲線

- 呼吸不全の定義は一般的にPaO2:60Torr(mmHg)、SaO2:90%を基準に考えます
- 重症外傷や急性心筋梗塞は酸素が治療の一環になるので、基準を待たずして高めに保持します。但し、過度な酸素投与による毒性に注意します
- 低酸素症状(意識障害、せん妄、不整脈、頻脈など)を疑う場合など
- 手術や処置などで一時的に必要な場合など
小まとめ
- ガス交換に関係しない換気が残るところを「死腔」と呼ぶ
- 拡散は濃い方から薄い方へ移動する
目標
ポイント
開始基準のPaO2:60Torr(mmHg)、SaO2:90%を目標にします。
但し絶対値で評価すると危険です。
今までの臨床データ(時間軸)を踏まえて評価しましょう。
例
SpO2:99%だったのに、そのまま経過を見ていると1時間後に92%になっていた場合、「よし、至適範囲だな!」と解釈せずに「何かが起きている?」と思った方が良いでしょう。
その原因は様々ですが、多くは酸素、心肺機能、機械などが原因ですので、臨床の状態と照らし合わせて確認しましょう。
分類と原因について
- 絶対条件:PaO2<60Torr、SaO2<90%
- Ⅰ型呼吸不全:PaCO2≦45Torr
- Ⅱ型呼吸不全:PaCO2>45Torr
Ⅰ型呼吸不全
ポイント
主にガス交換障害を主としますが、続発的に肺胞低換気にも陥ります。重症肺炎、ARDS(急性呼吸促迫症候群)、急性心不全などを原因とし、PaO2の増悪が主体でPaCO2は異常値(>45Torr)を示しません。
酸素投与
根本的な治療と並行して軽症の場合は鼻カニュラなどでの段階的な酸素療法を開始します。
注意ポイント
重症の場合(PaO2/FIO2<200、強度の呼吸困難、呼吸数25回/分以上など)は、NPPV(非侵襲的陽圧換気)やIPPV(侵襲的陽圧換気)での人工呼吸器管理を行います。
PaO2/FIO2はP/Fratioと言われ、呼吸管理では必要な知識なので覚えておきましょう。一般的な成人は98(Torr)/0.21(酸素濃度)で466になりますので、200未満がどの程度低いか分かりますね。

NPPV(非侵襲的陽圧換気)とは
【適応基準】
- 呼吸補助筋の使用と奇異性呼吸を伴う呼吸困難
- pH<7.35・PaCO2>45Torr
- 呼吸回数>25回/分
【除外基準】
- 呼吸停止、ショック、致死性不整脈など
- 非協力的、意識障害(不穏、せん妄など)
- 喀痰困難、誤嚥のハイリスク
- 顔面外傷など
Ⅱ型呼吸不全
肺胞低換気によるPaCO2の貯留が主です。COPD(慢性閉塞性肺疾患)、気管支喘息などはガス交換障害も生じます。呼吸中枢障害や神経疾患なども原因となります。換気不全を呈してPaCO2が45Torrを越えて貯留します。
呼吸性アシドーシスによるpHの低下には注意しましょう。
特に代償が働き始めない急激な貯留は危険です。pHの基準値:7.4∓0.5 基準値を目標にしましょう。
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酸素投与
CO2ナルコーシスに注意します。低酸素による弊害(心停止、脳障害など)の方が大きいのでPaO2が低い場合は躊躇せずに酸素投与を行います。尚、慢性疾患が無ければCO2ナルコーシスは発症しません。
肺胞低換気に対しては用手的に呼吸補助を行ったり、人工呼吸器での呼吸サポートが必要になります。喘息などに関しては気管支拡張剤などを投与します。
4種類の原因について
ガス交換障害
シャント
肺水腫や分泌物、胸水などで無気肺(虚脱・閉塞)になると、肺胞まで酸素が届かずにヘモグロビンが酸素化されず、そのまま再度心臓から送られます。
シャント(短絡):静脈と動脈が繋がっていること。完全に閉塞している場合は「真性シャント」、一部交通している場合は「シャント様効果」、血管奇形などは「解剖学的シャント(肺内シャント)」などと呼びます。
酸素投与での改善を示さないことが多いので、原因を解除します。原因は様々です。看護師としては喀痰などの場合での吸引が主になるでしょう。肺水腫の場合は利尿薬や陽圧換気を、肺血栓塞栓症では抗凝固薬の投与や外科的処置などを行います。
換気血流比不均衡
元々生理学的に見られますが、体位や病変により更に不均衡になることで起きます。肺尖部より肺底部の方が換気も血流も良いですが、実際の患者は臥床しているので腹側と背側の不均衡が起き易いです。
血栓などで血流が減ると健常なところに血流は再分布しますが、再分布先の酸素では足りず酸素化されない血液が出てしまいます。一方で、血流が減ったところではガス交換に関与しなかった余分な酸素が肺胞に余ります。
病変部で換気が少ないと、酸素化されない血液が出ます。病変部に届くはずの酸素が健常部に流れますが、血流はいつも通りなので酸素は余ります。
- 換気:肺尖部<肺底部(肺尖部は元々肺自体の重みで広がっていますが、肺底部は広がっていないので、換気した際に肺底部はより膨らみ、換気量が多くなります)
- 血流:肺尖部<<肺底部(気体と違って血液は液体なので、より重力の影響を受けて肺底部の血流が増えることによります)
看護師が行えることとしては体位調整が主になるでしょう。酸素投与や循環を安定させるのも大事です。
拡散障害
間質に肺水腫で水が溜まったり、間質性肺炎などで肥厚したり、COPDで肺胞上皮が破壊されたり、血栓で血流が途絶えると生じます。二酸化炭素は拡散速度が速いので影響を受けることは少ないです。原因疾患の治療や酸素投与などが主になります。
換気障害
肺胞低換気
呼吸中枢抑制や神経疾患、COPD、喘息、呼吸筋の疲弊などで生じます。肺胞に異常は無いですが、十分に呼吸ができずCO2を排出できなくなります。ストローを使ったり、閉口直前まで口を窄めて息をしてみると疑似体験できます。
今回は「呼吸不全」について解説しました。
まとめ
- Ⅰ型呼吸不全:PaO2<60Torr、SaO2<90%、PaCO2≦45Torr
- Ⅱ型呼吸不全:PaO2<60Torr、SaO2<90%、PaCO2>45Torr
- ガス交換障害:①シャント・②換気血流比不均衡・③拡散障害
- 肺胞低換気ではPaCO2が貯留する
- 重度の酸素化障害の場合はCO2ナルコーシスよりも酸素投与を優先する
- PaO2÷FIO2(P/Fratio)で酸素の状態を確認できる
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