
今回は、こんな声に応えていきます。
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【医療学生】iPad・アプリなどを活かした図解ノートによる勉強方法について<看護>
当記事で分かること
- 3種類の中隔欠損症について
<Contents>
先天性心疾患
小児でチアノーゼを認めた場合は先天性心疾患を疑います。但し、今回解説する疾患では、アイゼンメンジャー化に至らないとチアノーゼが見られないのが特徴的です。



今回解説する先天性心疾患は以下の通りです。
内容
- ASD(心房中隔欠損症)
- VSD(心室中隔欠損症)
- AVSD(房室中隔欠損症)
心房中隔欠損症(ASD:Atrial Septal Defect)
心房中隔の形成過程で「孔」が閉じずに、圧力の高い左房より右房に血流が入ってくる状態です。これを「左→右シャント」と言います。左室に流れる一部の血液が右房に流れるので、右房・右室・肺動脈などの容量負荷が生じて拡大化を起こします。
小児期までは無症状で気付き難く、主に思春期以降で見付かります。後述するVSD(心室中隔欠損症)と違って10mm以上となった多くの孔は自然閉鎖しないです。成人の先天性心疾患では40%程度と最多です。
検査・症状・治療
検査
- 心エコー
- 聴診(Ⅱ音固定性分裂)
- 心血管造影
Ⅱ音は大動脈弁(ⅡA)と肺動脈弁(ⅡP)の閉じる音です。自然吸気時は、静脈還流が増えることで駆出時間が延びて肺動脈弁の閉鎖が遅くなりますが、これが呼気時と変化しない現象です。
症状
息切れ・動悸・易疲労感などを呈します。30歳以降は心不全による死亡が増加し、40歳以降では心房細動・心房粗動の頻度が増えます。不完全右脚ブロックなども認めます。
治療
軽症では様子を見ます。心房細動発症時は抗凝固療法やカルディオバージョンなどを検討します。
アイゼンメンジャー(Eisenmenger)症候群
注意ポイント
更に長年負荷が掛かると、肺動脈が肥厚して内腔が狭くなります。これにより肺高血圧(PH:Pulmonary Hypertension)が更に進展して血流が流れ難くなり、「左→右シャント」が「右→左シャント」になります。これをアイゼンメンジャー(Eisenmenger)症候群と言います。
端的に言うと静脈血と動脈血が混ざって酸素を十分に送られなくなります。こうなると予後不良で、手術適応も無くなります。静脈血の多い血液が体循環に流れていくので、低酸素血症を主因とし、突然死・心不全などで亡くなります。
手術
- 経皮的デバイス閉鎖術
- 外科的閉鎖術
アイゼンメンジャー化した症例では原疾患の手術は禁忌です。
心室中隔欠損症(VSD:Ventricular Septal Defect)
先天性心疾患で30%と、一番頻度が多いです。
心室中隔の形成過程で「孔」が閉じずに、圧力の高い左室より右室に血流が入ってくる状態です。これを「左→右シャント」と言います。左室に流れる一部の血液が右室に流れるので、右房・右室・肺動脈などの容量負荷が生じて拡大化を起こします。
小さな孔だと2歳までに自然閉鎖する可能性が高いですが、2歳を超えると自然閉鎖の可能性は減少します。予後は比較的良好とされています。
分類
欠損孔の部位によって、カークリン(Kirklin)の分類で分かれています。
Ⅰ型 | Ⅱ型 | Ⅲ型 | Ⅳ型 |
高位欠損 | 傍膜性部 | 後方欠損 | 低位欠損 |
30%程度 | 最多・半数以上 | ダウン症で高頻度 | 日本では低頻度 |
検査・症状・治療
検査
- 心エコー
- 心臓カテーテル検査
症状
小さな欠損では自覚症状が少ないが、大きくなるほど呼吸困難や易疲労感などを呈します。酷い場合はアイゼンメンジャー化します。乳児では体重増加不良・多呼吸・哺乳不良などを呈します。
合併症
- 感染性心内膜炎
刺激伝導系が近いので、術後に房室ブロックを起こす可能性が考えられます。
治療
軽症では様子を見ます。中~大欠損では手術を検討します。
手術
- 外科的閉鎖術(パッチ手術)
- 房室ブロック時:ペースメーカー植込み術
AVSD(房室中隔欠損症)
完全型と不完全型に分かれます。共に心房中隔欠損と房室弁(三尖弁・僧帽弁)の異常を持ち、更に完全型では心室中隔欠損を伴います。ダウン症で合併する確率が高いと報告されています。
手術では中隔欠損のパッチ閉鎖術や房室弁修復術を行います。
今回は「中隔欠損症」の解説をしました。
まとめ
- 小児のチアノーゼ(全身・持続)は先天性心疾患を疑おう
- 最多なのはVSDで、成人最多なのは気付かれ難いASDです
- 2歳までに自然閉鎖又はパッチ手術などを行います
- VSD、ASDは「右→左シャント」で、軽度だと無症状です
- アイゼンメンジャー化して「左→右シャント」になると予後不良!
- AVSDはダウン症に多いです
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