
今回は、こんな声に応えていきます。
当記事で分かること
- 脳卒中の前兆について
<Contents>
脳卒中(stroke)とは
TIME IS BRAIN!脳は経過時間で治療内容や予後が大きく変わってしまいます。
簡単に分けると、虚血「血管の詰まり、血流不全など」と出血(溢血)「血管の破れ」になります。
後遺症で寝たきりになる疾患1位です。
- 虚血:血の塊が局所で形成(血栓)されたり、別の場所から飛んできた場合(塞栓)、血流が途絶えた場合などになります。
- 出血:血管が脆くなったり、瘤になっているところが破綻するとなります。外的因子(事故など)でも生じます。
全体の死因は4位で7.9%です。

出典:厚生労働省
ポイント
内訳は脳梗塞が多いですね。もし脳卒中を学習する場合は割合的に脳梗塞からがオススメですね。

出典:厚生労働省
BE-FAST
米国では40秒毎に脳卒中が起きていると報告されています。
基本的には「FAST」を覚えましょう。
「BE-FAST」で感度を上げる方法も報告されています。FASTよりも感度が10%程度上昇するそうですが、検出精度が変わらなかったとの報告も出ています。
脳は呼吸中枢も存在するので、呼吸(いびきなど)がいつもと違う場合も注意しましょう。
B:Balance
- 平衡感覚の喪失(眩暈、頭痛など)
頭痛は比較的出血に多く生じます。特にくも膜下出血では、突発的な激痛を認めます。血管の拡張や破綻による神経への刺激が主な原因です。
発症した場所にもよりますが、脳出血や脳梗塞では神経障害による平衡感覚の異常(麻痺)などが出現します。
どれも場合によって嘔吐や意識障害を伴います。
E:Eyes
- 視覚異常(ぼやける、暗くなるなど)
視覚の中枢は後頭葉(脳の後ろ)に領域が存在しています。この周辺に病変が見られると、視野に異常が見られることが多いです。
F:Face
- 表情(口元、眼尻、額など)が偏っている
A:Arm
- 四肢の脱力、感覚異常、麻痺、痺れなど
S:Speech
- 発話不可、意味不明な言葉など
日本人の2/3程度は言語野は左側だと言われているので、言葉に異常が出た場合は病変は左側の可能性が高いと言えます。
前頭葉(脳の前、ブローカー野):言葉は理解できるけど、話せなかったり詰まってしまいます。
側頭葉(脳の横、ウェルニッケ野):言葉の理解は不良だが、流暢に(主に意味不明な)会話をします。
T:Time
- 発症時刻を記憶し、急いで救急車を呼ぶ
脳梗塞の場合は4.5時間以内に開始できれば血栓溶解療法(rt-PA)の適応になる可能性が出てくるので、脳の不可逆的ダメージを和らげる為にも素早く行動しましょう。
各種検査や搬送も含めると、出来る限り早く救急車を呼ぶのが良いでしょう。例え超過しても早いに越したことは無く、他の血管内治療も適応になる可能性が考えられます。
一過性脳虚血発作(TIA)
一過性脳虚血発作【Transient (cerebral) Ischemic Attack】は、脳梗塞の前触れです。
一時的に血管が詰まり、その後自然に開通して24時間以内に軽快するので、放ってしまう人も多いですが非常に危険です。ABCD2スコアで危険度を判断します。
- Age(年齢):60歳≦ 1点
- Blood Pressure(血圧):収縮期140≦ or/and 拡張期90≦ 1点
- Clinical Features(臨床症状):一側の筋力低下2点 構音障害(麻痺無し)1点
- Duration(持続時間):60分≦2点・10分≦1点
- Diabetes(糖尿病):有1点
<2日以内に脳卒中を起こす確率>
- 3点以下:1%
- 4~5点:4.1%
- 6点以上:8.1%
心原性脳塞栓症
心臓の科で働いている人は確認しておきましょう。
注意
心房細動や心筋梗塞、感染性心内膜炎などで心腔に生じた血栓が脳に飛ぶと生じます。塞栓を懸念し、危険性が高い人には安易に電気ショックをしません。
血栓が急に飛んでくるので、徐々に詰まる他の疾患と違って側副血行路(脇道の栄養血管)を作る時間も無く、重症化し易いです。
出血性梗塞(脳梗塞後に起きる脳出血)も起き易いとされます。心房細動患者の脳梗塞危険性評価はCHADS2スコアを使います。
- Congestive heart failure(心不全):1点
- Hypertension(高血圧):1点
- Age(75歳≦):1点
- Diabetes(糖尿病):1点
- Stroke/TIA(脳卒中):2点
- 合計1~2点以上:抗凝固薬開始(検討)
最後に
夏になって暑くなると、脱水に陥りがち。水分が減ると血管も詰まり易いので、脳梗塞予防に水分摂取(+塩分)を心掛けましょう。但し心不全や腎不全などの方は、摂取し過ぎに注意しましょう。
