
今回は、この様な声に応えていきます。アサーションは一般の人でも使えるスキルです。
当記事で分かること
- 医療事故とその背景について
- 医療安全(Team STEPPS)について
- 日常でも使えるアサーションについて
- 業務で使えるコミュニケーションスキルについて
[/st-mybox]
<Contents>
チームステップス(Team STEPPS)とは

Team Strategies and Tool to Enhance Performance and Patient Safety
医療の成果と患者の安全を高めるチーム戦略と方法
ポイント
私も最初に聴いたときは「?」でした。近年は病院でも研修で取り扱っています。米国のAHRQ(医療研究・品質調査機構)が開発したツールです。アメリカでは医療事故の2/3がノンテクニカルスキルで起きたとの調査結果が出ています。それらを改善する目的で作られました。
背景
2016年の調査で、アメリカの医療事故死は年間10万人(死因第3位)だと発表されています。その後、2019年には2016年の調査結果の1/50~1/80だったと報告されました。真偽は分かりませんが、少なからず医療事故死は存在すると言うことです。
4つのコミュニケーションスキルで円滑な情報交換と医療事故を防ごう!
相互に情報の隔たり無く、円滑に迅速に責任をもって意思疎通を行える能力
・SBAR(エスバー)
・Check Back(チェックバック)
・Call Out(コールアウト)
・Hands Off(ハンドオフ)
SBAR(エスバー)
ポイント
このスキルは頻繁に使います。意識しないと出来ないので、必ず身に付けましょう!学生のうちに意識しておくと、臨床で100%役立ちます。これは断言できます。4つの英語の頭文字から付けられました。
・Situation:状況(今何が起きているのか?)
・Background:背景(状況に関係する疾患、検査値など)
・Assessment:評価(自分の判断)
・Recommendation:提案と依頼(何をした方が良いのか提案し、何をして欲しいのか依頼する)
参考
最近はISBARCと言ってIdentity(報告者、対象者)やConfirm(口頭指示の確認)が付け加えられていますが、最初は覚え易いSBARでも良いかと^^
Bad
看護師:血圧が下がっています!
医師:ん・・・?報告それだけ?
よく見る光景です。恐らく大抵の医者は「ん?」って思います。そして苛立ちます(笑
「血圧が下がった」と言う「Situation」のみ伝えられているので、受け取った側が状況を判断できないので困惑します。聞き返したら良いのでは?と思うかもしれませんが、回数を重ねると報告された側は疲れますし、そもそもタイムロスです。切迫している時にタイムロスが生じると危険です。
Good
看護師:△△です。尿路感染で入院した〇〇さんの収縮期血圧が〇△mmHg台から△〇mmHg台に下がっています。(その他略)、末梢も温かくて敗血症によるショックの可能性が考えられます。診察を御願いしたいです。昇圧薬は投与していませんが、輸液やノルアドレナリンなどを用意しておきますか?
医師:ふむふむ、なるほど。診察に行く間に用意して貰おうかな。
「Situation」(血圧)、「Background」(尿路感染、バイタルサイン、昇圧薬の有無、末梢の温かさ、その他など)、「Assessment」(敗血症、ショック)、「Recommendation」(ノルアドレナリン)が全て揃っていますね。
最初は難しいかもしれませんが、慣れれば簡単なので意識していきましょう。
Check Back(チェックバック)
「復唱」と言う意味です。
- 医師:〇〇を10mg静脈注射してください。
- 看護師:分かりました。〇〇を10mg静脈注射ですね?
- 医師:そうです。〇〇を10mg静脈注射です。
- 看護師:了解です。
双方が復唱することでミスを低減させます。特に単位は間違えると危険ですので気を付けましょう。
Call Out(コールアウト)
「大声で叫ぶ」と言う意味です。
主に緊急時に使うことが多いと思います。
Hand Off(ハンドオフ)
業務の引継ぎです。
互いに疑問点や問題点は解決できる様な意思疎通が大事です。「コレがアレだから、後宜しくね!」と言った一方的な引継ぎはNGです。
3つの相互支援スキルで相手に気持ちを伝えて疑問や不安を解消しよう!
チームメンバーのスキル(知識・技術・その他)を踏まえた上で業務量などを正確に評価し、業務や知識の支援をして安全管理をする能力です。
- Two Challenge Rule(ツーチャレンジルール)
- CUS(カス)
- DESCスクリプト法(アサーション)
Two Challenge Rule(ツーチャレンジルール)
その名の通り2回チャレンジするルールです。
安全に疑問を感じた際に、相手の応答に納得できない場合は再度聴き返します。
- 医師:△△さんに〇〇を5ml静脈注射しといてください。
- 看護師:〇〇を5ml静脈注射ですね?
- 医師:そうです。〇〇を5ml静脈注射です。
- 看護師:あれ?5mgの間違いかな?
- 医師:(①)あ、5mgでした。
仮に意見を聞いてくれない場合は言い方を変えてみましょう。例えば、先程の(①)で次のように返されたとします。
- 医師:良いから!早く5ml打って!(怒)
- 看護師:〇〇は1アンプル5mg/mlで、5ml投与すると25mgですけど大丈夫ですか?
- 医師:・・・間違えました。5mgでした。

上記の例のように情報の切り口を変えることで気付き易くなります。相手が切迫していたり、いつもと違う状況だとミスは起こり易いです。人間誰しも間違えます。上司や医師などの指示が絶対だと思い込まないようにしましょう。
多くは相手が間違うはずは無いと言う、過信から来ます。「医者」などの肩書で信じてしまう、権威性などによる「ハロー効果」ってヤツです。
CUS(カス)
不安を表現する方法です。
- C:I am Concerned → 「気になります、心配です」
- U:I am Uncomfortable → 「不安です」
- S:This is a Safety issue → 「安全の問題です」
自分が感じていることを率直に声に出します。特に「ハロー効果」などによる場合、気付いていた人が言うのを躊躇し、重大な事故に繋がったケースも多く、怯まずに言うことが大事になってきます。
DESC(デスク)スクリプト法(アサーション)
相手に伝えたいことを「客観的状況」、「主観」、「提案」、「代案」の4つに整理して伝える方法です。アサーティブに伝えたい時に役立ちます。
アサーティブとは、相手の意見を尊重しつつも、きちんと自分の意見を伝えることです。アサーティブなコミュニケーションをアサーションと言います。
アサーションは「誠実」、「率直」、「自己責任」、「対等」がポイントです。
臨床以外で、カップル・夫婦・その他人間関係で使える汎用性の高いスキルです。
- Describe(描写/客観的状況):具体的、客観的に状況や行動を描写する。感情は含めない。
- Explain(説明/主観):Dで描写した事実に建設的に気持ちを説明する。
- Spesify(明示/提案):相手に自分の考えた案を明示する。
- Choose(選択/代案):相手の是非に対して、それぞれの選択を示す。
言いたいことを述べないのも良くないですし、言いたいことを攻撃的に述べるのも良くないです。昨今SNSなどでの誹謗中傷が見られますが、普段言えない不満やストレス発散を、本人や第三者への「陰口」と言った方法で行っている可能性も考えられます。DESCを意識してアサーションスキルを伸ばし、建設的に意思疎通を図れる人になりましょう。
アナタはどのタイプ?
富岡義勇タイプ(非主張的) | 鬼舞辻無惨タイプ(攻撃的) | 竈門炭治郎タイプ(アサーティブ) |
|
|
|
出典:鬼滅の刃
指導者やカップルとのコミュニケーションに悩む看護学生、看護師にお勧め!
状況認識スキルを磨いて相互支援をしよう!
個々やチームで様々な情報を入手・分析して現状を把握し、周囲に報告してエラーを防ぐ能力です。
観察の共有
自分の担当患者、業務、体調、思考などは勿論、他のチームメンバーの状況やイベント(入退院など)を積極的に観察して発信し、共有する。
クロスモニター
お互いにインシデント(ミス)やアクシデント(事故)に繋がらないように、積極的に提案や是正を求めたり、支援する。
リーダーシップを身に付けて現場の司令塔になろう!
今までのスキルと合わせて情報や目標をチームで共有し、状況に応じて的確に指示や支援をすることで業務を調整する能力です。
最重要項目です。
Brief(ブリーフィング)
業務開始前に、本人に目的や役割を確認、指示出しをする。人によっては優先順位の低い不要不急の業務から取り掛かるので、非常に重要です。
Huddle(ハドル)
作戦会議(由来:アメリカンフットボール)、業務中に出た問題や変更点を話し合う。業務量やスキルなどに合わせて人員などの再配置を検討する。
Debriefing(デブリーフィング)
業務終了後にその日の問題点や改善点を話し合って次に繋げる。
最重要な理由
どの組織や社会でも、統率が取れていないところは混乱を来したり後れを取ってしまいます。医療の場で混乱や後れは、そのまま重大な事故、即ち「命」に直結してしまうのです。
リーダーシップは誰でも身に付けることができます。年数とも無関係です。「知識」や「技術」を身に付け「信頼」を得て、実践で「判断力」や「冷静さ」を養っていくと良いでしょう。
経験が浅いうちは、コミュニケーションや相互支援から段階的に進めていくのが良いと思います。
